特集/コラム

【エリア特集】2008-03-07

本と街の関係探る初の連携イベント「ブックマークナゴヤ」
「寄り道」文化のない名古屋に一石を投じる

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 名古屋の書店、カフェ、雑貨店などが協力して「本と街の魅力を再発見しよう」と始まった本のイベント「BOOKMARK NAGOYA(ブックマークナゴヤ)」が3月2日、閉幕した。

 2月9日から約1カ月間開催された同イベントは、長者町の書店「YEBIS ART LABO(エビスアートラボ)」(中区錦2)の岩上さんと黒田さん、「リブロ名古屋店」(中区栄3)・辻山さん、「cesta(チェスタ)」(千種区末盛通1)・山守さん、本山の古書店「シマウマ書房」(千種区四谷通1)・鈴木さん、名古屋のフリーペーパーマガジン「SCHOP(スコップ)」編集者の上原さんらが中心となって企画された。

 イベントでは、各店でトークショーを行ったり、各店のスタッフが本を推薦する企画「とっても好きな人に本を贈って、名古屋を本のある街にしよう!プロジェクト」を展開したり、概要を記したリーフレットを作成し、参加各店を回る「スタンプラリー」を開催するなど、1店舗だと微力になってしまう「店舗プロモーション」としての機能も果たすべく、さまざまな企画が開催された。名古屋で初めて開催された大型の本のイベント「ブックマークナゴヤ」を追った。

■ きっかけは小さいイベント計画−意識を高め合ったイベント初日



 「最初は小さいイベントを行なう予定だった」と振り返るのは、「エビスアートラボ」の岩上さん。「イベントを企画していくうちに、多くの人が集まってくれて、最終的にとても大きな動きになった」と振り返る。

イベント開催当日の2月9日には、新栄のカフェ「パルル」でオープニングパーティーを開催。書店関係者以外の人たちも含め、各方面から多くの人が集まりイベント成功へ向けて気持ちを高め合った。会場のあちらこちらでは「横のつながりを作るいい機会」と、にぎやかに名刺交換や意見交換を行う姿が多く見られた。参加者の一人は「普段なかなか交流のない、他業種の人や書店同士がひとつになれるイベントは珍しく、楽しい試み」と笑顔で会場を眺めていた。

パーティーでは、「スコップ」の上原さんがマイクを持ち、「無人島に持っていきたい本」「今の仕事に就くきっかけ」「最近困った話」「面白い話」などのテーマで参加者に話してもらう時間も設け、笑い声が絶えないイベントとなった。(写真=「エビスアートラボ」岩上さん)

イベントが動き出すまでの入念な打合せ

  大型書店から小規模な古本店や雑貨店、カフェなど、さまざまなジャンルの店舗がひとつになってイベントを進めていくには、多くの人の理解を得るための入念な打合せが必要となる。しかし、今回のイベントは10月に企画が持ち上がり、2月のイベント開始まで約3カ月しか時間がなかった。それは、イベントを多くの人に告知する十分な時間が取れなかったということ。イベント前の打合せでは、「オアシス21」にある観光案内所で積極的にアピールしてもらう、土曜・日曜専用の市バス・地下鉄1日乗車券「ドニチエコキップ」を使って各店を回った場合は割り引きする、各駅にポスターを貼ってもらうなどといった、「街全体をイベントに引っ張り込む」案が多く出されていた。

古本店「シマウマ書房」の鈴木さんは、「ふたを開けてみないとどのような反応が帰ってくるかはわからないが、イベントには期待しているし、次回は今回の反省も踏まえ、より時間をかけて計画していきたい」と、イベント開催を半月後に控えた1月中旬に、大きな期待と少しの不安とが混ざる表情を浮かべていた。それは、各実行委員も同様だった。

「寄り道文化」のない名古屋の街

  そもそも名古屋の街は「寄り道文化がないのでは」と言われている。「東京などでは、駅と駅の間に小さな店舗などが点在し、各エリアが発達してきた。そのため、人々は歩きながらその都度、街についての新たな発見をすることができる土壌ができている」と話すのは、東京から名古屋に赴任して1年半という「リブロ」の辻山さん。

名古屋の場合は、栄や大須、名駅エリアを除いては、街と街が離れているため、地下鉄や車を利用して移動することが多く、各エリアにある店舗同士を結び、相乗効果で大きくなっていくことが難しい。目的地を定め、移動する。そんな「寄り道」がしにくい街では、アートや文学など、目に見えないものに興味を持つ機会も少なく、またそれらが発展しにくい土壌になっているのではないか、とクールに分析する。

実際、新しいビルが生まれ、効率的なことを追求しがちな名古屋の街では、大型書店ひとつとってみても、「金太郎飴のように同じ顔」(同)であることが多く、各書店の特色が打ち出しにくい環境にあると言えるという。「しかし、『目に見えないもの』を求めている人は多く、まだまだキャパシティーのある街だと感じている」と辻山さんは続ける。実際、リブロ内のアートブックコーナーや洋書コーナーには多くの若者が来店している。

「寄り道文化がないことは、『目に見えない何か』を求めている人と、その求めているものを扱っている店がなかなかつながらないことがあるということ」とし、「ブックマークナゴヤが、そんな『何かを求めている個人』に深く刺さり、新たな興味を喚起するひとつのきっかけになれば」という思いも込められている。

ふたを開けてみると…

 準備期間が短かったとはいえ、名古屋初の同イベントは、多くの地元メディアに取り上げられた。そのため、イベント開催後の週末は、リーフレットを手に各店舗を回る人が多く見受けられた。

イベント参加店のひとつ、アートブック店「ワンオンワン」(中区栄3)の茂木さんは「リュックなどを背負って、いかにも『歩くぞ』という格好の年輩の夫婦が、リーフレットを片手に来店したりもしていた。また、デートの途中でイベント開催を知った若いカップルも残りの半日を使って各店を回ることにしたと話していた」と、イベントの反応を直に感じた時の様子を話す。

 「スタンプラリーのおかげで、これまで当店のことを知らなかったお客さんも多く来店してくれた。若い人が中心のイベント実行委員の方たち熱い気持ちが反映された、とてもいいイベントになったのでは」とほほ笑む。「これからも続けていただいて、10年後には『ブックマークの季節=春』というような、季節を感じるイベントになってほしい」と期待を込める。

今後は…

 どの参加店も一様に好感触となった「ブックマークナゴヤ」。「今後のイベントの予定は?」という問いに、「エビスアートラボ」の岩上さんと黒田さんは「妄想は果てしなく広がる」と笑顔を見せる。

「全国には、まだまだたくさんのおもしろい本のイベントがある。それをそのまま名古屋に持ってきたとしても、他のエリアとは違った反応が見られると思うので、それも楽しいが、どこもやったことがないような企画も頭の中にはたくさんある」とし、「継続することこそが大切だと思うので、無理なくやれる方法を考えて、次の面白いことをやって、本の楽しさを広めていきたい」と思いをはせる。

今後も、「ブックマークナゴヤ」の実行委員がプロデュースするさまざまなイベントを開催していく予定。「ポテンシャルはあるが、そこに届ききれていない」と言われる名古屋で、文化的により成熟した街へと高めていく若者たちの挑戦は続く。


38店参加−本のイベント「ブックマークナゴヤ」、開催準備進む(サカエ経済新聞)

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