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栄で演劇「ある男、ある夏」 寺山修司生誕80年で

栄の「G/Pit」で上演される「ある男、ある夏」。けいこの様子。

栄の「G/Pit」で上演される「ある男、ある夏」。けいこの様子。

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 栄の劇場「G/Pit(ジー・ピット)」(名古屋市中区栄1)で11月27日~30日、「エス・エー企画」の舞台「ある男、ある夏」が上演される。公演に先立ち、演出の鹿目由紀さんが作品の見どころを語った。

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 劇作家・寺山修司の魅力を新しい世代に伝えることを目的に立ち上げられた同企画。名古屋を代表する演出家や俳優が集結し、観客に「テラヤマワールド」を体験させる。

 寺山修司は1935(昭和10)年生まれ。18歳で歌人としてデビューし、劇作家、詩人、小説家、映画監督など、さまざまな創作活動を行った。1967(昭和42)年に結成した演劇実験室「天井桟敷」は国内外で多くの作品を上演。日本を代表する劇作家となったが、1983(昭和58)年に急逝した。生誕80年となる今年は、各地で舞台や記念イベントなどが上演、開催されている。

 「ある男、ある夏」は1967年に書かれたラジオドラマ脚本を舞台化したもの。ある男が日々の生活の中でふと出会った少女と他愛(たあい)のない会話をする姿から、小さな日常に起こる小さな非日常を淡々と描く。主人公の男を「劇団あおきりみかん」の松井真人さん、少女はオーディションで選ばれた河合希実さんが演じる。ほかに「劇団B級遊撃隊」の佃典彦さん、火田栓子さんらが出演する。

 演出の鹿目さんは「劇団あおきりみかん」主宰。奇抜なシチュエーションの中で行われる会話と関係の「ずれ」を中心とした喜劇で、名古屋市文化振興事業団芸術創造賞、松原英治・若尾正也記念演劇賞などを受賞している。

 鹿目さんは「寺山修司の作品は一つひとつの言葉が美しく、そして生々しい。上演作は寺山作品の中ではライトなものだが、それでも人間の魅力が立ち上がってくるような生々しい力がある。男の逡巡(しゅんじゅん)や迷いがシンプルに打ち出されていて、臨場感がある。若い人が見ても、年を重ねた人が見ても、引き込まれる物語」と話す。

 演出については「60年代の香りのようなものを感じてほしいので、せりふには手を加えなかった。当時は安保闘争で騒然とした時代。男が少女と会話して思う姿は、揺れ動く時代を生きる現代人にもつながるはず。街の中でいきなり始めたり、移動しながら演じたりと、どこででも行われることも寺山演劇の魅力。入り口を通った時から作品世界に入っているような空間をつくり出したい」と意気込む。

 俳優陣は鹿目さんが「本当に一緒にやりたい俳優」を選んだという。「松井さんは何にでもなれる俳優で、時代を飛び越えてくれる。佃さんはワクワクする俳優で、とにかく面白い。火田さんは声と存在感が圧倒的な女優。河合さんは豊田市で演劇を練習している12歳の女の子。この役は本当の意味での少女で上演したかったので、オーディションを行った」

 最後に鹿目さんは「1時間に満たない短い中に、いろいろなものが詰まっている作品。寺山修司の魅力が存分に発揮されていて、見終わった後は大きな満足感を得られるはず。寺山修司ファンはもちろん、初めて見る方にも楽しんでもらえるので、劇場に足を運んでいただけたら」と呼び掛ける。

 料金は一般=3,000円、学生=2,000円(当日券はともに500円増)。

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