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名古屋・長者町で「オカチなAMR」 地元アトリエが建物解体前に展覧会

河村るみさんのワークショップ作品「ビュートレス」

河村るみさんのワークショップ作品「ビュートレス」

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 錦・長者町通りの「岡地株式会社」旧社屋(名古屋市中区錦2)で3月1日から、展覧会「オカチなAMR」が開催されている。同展は国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2016」のパートナーシップ事業。

解体が決まった「岡地」旧社屋

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 主催の「AMR(アート・メディア・ルーム)」は、「長者町トランジットビル」を拠点に創作、展示を行う共同アトリエ。2012年に同ビルのリノベーションに合わせて立ち上げ、企画展示やパフォーマンスフェスティバルの開催、地元の祭への参加など、街から生まれるアートの創造に取り組んでいる。「あいちトリエンナーレ2013」では長者町の丹羽幸株式会社ミクス館で企画コンペ展示「search for(サーチ・フォー)」を開催した。

 「オカチなAMR」は岡地株式会社が2015年末に社屋移転したことに伴い、「search for」の街中展開で会場となった旧社屋の解体が決まったことから企画された。出展する8人は、浅井雅弘さん、前川宗睦さん、河村るみさん、中村香央里さん、鈴木優作さんのAMRメンバー5人と、過去の企画展・コンペに参加した同アトリエゆかりの作家・平松伸之さん、設楽陸さん、藤井龍さん。

 AMRの浅井さんは「旧社屋は2013年のトリエンナーレで河村が作品を展示した場所。作品は本展終了後もガラス窓に残されて街の一部になっていた。建て壊しが決まり、この建物での最後のパーティーを開催し、これまで街に関わってきたアーティストたちの展示をしようと企画した。これまでAMRが長者町で行ってきた活動の一つの集約になる展示」と話す。

 呉服店だった同社屋に残された着物カタログやカレンダーをモチーフに滞在制作で描かれる設楽さんの「オカチなガーデンビュー」や、町内の飲食店「世界の山ちゃん」からもらい受けた大量の手羽先の骨で衣服やアクセサリーを作り続ける鈴木さんの「手羽先原人」など、建物や街に関わる作品、日々形を変える展示などが並ぶ。

 河村さんの展示「ビュートレス」は、建物内から見える街の風景を窓ガラスにクレヨンでなぞっていく作品。期間中にワークショップを行い、来場者が河村さんとともに作品を描いていく。

 河村さんは「今まで作品を残し続けてくれた建物が無くなるのは寂しいし、残念な思いがあるが、最後に展覧会ができることになって、とてもうれしい。風景は動かないイメージがあると思うが、トレースしたその時にはあった目の前の眺めが無くなることがある。建物はなくなっても、絵や描いた記憶は残る。参加型の作品なので、建物でも車でも、それぞれの目線で見えたものを自由にトレースしてほしい。なぞることをするので、絵心が無いと思っている人でもクレヨンを手に取って楽しんでもらえたら」と話す。期間中に塗り重ねられた作品は、取り外して残さずに最終日に全て消す予定となっている。

 初日に訪れた岡地株式会社の岡地芳孝社長は「建物は経年劣化が厳しくて壊さざるを得なくなったが、最後にこういう形で使っていただいて喜んでいる。展覧会を見ながら、こんなにきれいな建物だったかなと驚いた。最終日までに、また家族と一緒に見にこようと思っている。この街で生まれ育って50数年、トリエンナーレの会場に長者町が選んでもらえたことは、うれしかった。長者町は繊維業に元気がなくなってきた時期だったので、アートや若い人の力が入ることに期待した。それがアートを応援する街になった理由かもしれない。3回目を迎えるトリエンナーレ本展では、また新しい魅力が増えてくれたらうれしい」と笑顔を見せる。

 開館時間は12時~19時。入場無料。今月13日まで。期間中はアーティストトーク(6日)、ビュートレス・ワークショップ(4日・5日・13日)などが開催される。

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