栄で57年間カメラ店を運営している「アサヒドーカメラ」(名古屋市中区栄3)は4月28日、カメラ店を縮小リニューアルし、併設する形で音楽スタジオ「スアジオアサヒドー」(TEL 052-261-3588)をオープンした。
これまで栄でカメラ量販店として営業を続けてきた同店。安さを売りに、カメラや携帯電話などの販売を続けて来たが、「10年ほど前から、このまま量販店として続けて行くことに厳しさを感じていた」(社長の後藤寿美さん)ことから一念発起しスタジオを立ち上げた。
10年ほど前からバンド活動を続けているという後藤さん。「いつかはこのビルの屋上などに、自分が気に入ったプライベートスタジオのようなものを作ってみたい」という夢を抱いて来たという。「少しずつスタジオのことが頭から離れなくなった時に、ふと音楽スタジオの運営を事業として意識するようになった。それはカメラ店の存続にもつながるのでは」(後藤さん)と考え、昨年5月からスタジオ運営に向けて本格的に動き始めたという。
多くの専門家に話を聞きながら、「多くの人が利用しやすく、かつきちんと収益を上げられるスタジオ作り」に着手した後藤さん。「きちんとビジネスとして運営していくためには、最低8室のスタジオが必要」と計算した後藤さんは「ビルのほとんどがスタジオになってしまう」と、カメラ店も小スペースで落ち着いた接客ができる「クラシックカメラ」専門店に切り替え、内装も一新。明るい照明でにぎやかな印象を与えていた店舗から、照明を抑えた落ち着いた印象の内装へと変えた。外装も、後藤さんがファンだというウィーンの建築家・フンデルトヴァッサーの作品を参考にした、カラフルで楽しげなデザインにした。
1フロア約100坪の同店。2階にはスタジオの受付とロビーのほか4室のスタジオを設置し、併設する形でカメラ店を展開。3階にはロビーを囲むように6室のスタジオを、4階には約29坪のホールを設けている。「音楽に限らず、ダンスでの利用やヨガ、合唱団などさまざまな用途で使ってもらえれば」と後藤さん。「音楽に関係なくても、ロビーでお茶を飲んだり、打ち合わせに使ってもらったりと、憩いの場になってくれればうれしい」とし「中高年の方々のバンドブームもあるので、若い方達だけでなく、50歳を過ぎた方たちが集まれる場所になれば」とも。
各部屋に置かれているドラムは、実際に後藤さんが瀬戸の有名ドラムメーカー「TAMA(タマ)」の工場まで足を運び、材質からカラーリングまで後藤さん自身が選んだという特注品。アンプなどの機材にもこだわり、さまざまな世代の「人生には欠かせない『音楽』を中心とした活動」をバックアップしていく。
「音楽を通して、街のブランディングに少しでもかかわることができれば」と後藤さん。「カメラ店がスタジオを作ったと聞くと、多くの人は撮影スタジオを作ったと思う人が多いみたい。まずは音楽スタジオだということを知ってもらわなくては」と笑う。「好きなことは事業にならないというのが今までの持論だったが、やはり好きなことが仕事になっている状態はとてもすてきなこと。私情はあまり入れずにしっかりと運営して、このエリアのランドマーク的な存在になれれば」と意気込む。
スタジオは24時間営業。各部屋の利用価格などはホームページで確認でき、予約することができる。