大須の移動式トラットリア「Zenccino(ゼンチーノ)」(名古屋市中区大須3、TEL 090-7613-2508)が6月初め、宮城県の被災地を訪れミートソースパスタの炊き出しを行った。
3月に県内初の「食堂車」規格を取得したゼンチーノ号。震災後、すぐに被災地に赴こうとするも、規制線が張られていたなどの諸事情によりかなわなかったが、6月にフェリーの一般人乗船許可が下り実現した。
被災地に向かったのは、シェフの市川善一さん、妻の実保さんに、実保さんの妹と浜松在住の知人が加わった4人。3日夜、企画に賛同したレストランの協力も得、仕込んだ和牛ミートソース2000食分、タマネギペースト、国産牛豚ひき肉70キロ、かき氷シロップを車に詰め込みフェリーに乗船。台風などの影響もあり22時間かけ、翌日夕方、宮城県塩釜港に到着した。
炊き出しの場所はネットなどで調べ、地元の自治体が復興に力を入れている宮城県名取市のゆりあげ港朝市と陸前高田や石巻と同じくらいの被害を受けた亘理郡亘理町の避難所に決めた。メニューは子どもが喜びそうな「ミートソースのパスタ」を選んだ。
天候に恵まれた5日、「ゆりあげ港朝市」から炊き出しをスタート。震災後、港からスーパーの駐車場に場所を移し毎週日曜の朝6時から開始する同朝市。地元の人たちの呼び掛けもあり、通常500人訪れるところ約2000人が市場に集まった。多くの人たちでにぎわう中、終了する10時までに1500食を提供。午後は亘理町の逢隈小学校と亘理中学校の避難所に。気温が上昇してきたこともあり、パスタのほか、かき氷も振るまい、子どもからお年寄りまで喜んでくれたという。
名古屋に帰る翌6日。10時50分のフェリーに乗船する前にも亘理小学校の避難所へ向かった。町役場の職員から「ご飯に合うおかずを」というリクエストに応え、急きょ、持ってきていたひき肉を使いメニューを牛丼風にアレンジ。残されたわずかな時間で170食提供し、その後船に飛び乗った。
「実際に行ってみると現地はホテル、ファミリーレストラン、スーパーなど営業していて、想像以上に街は動いていた」と善一さんと実保さん。「炊き出しをしたゆりあげ港朝市は震災後、2週間で復活した。出店している自営業の人たちなど復興に向け熱心で、朝市は活気にあふれていた」と振り返る。「逆にエネルギーをもらった」とも。
「個人なのでいろいろ手を広げるよりも、一つの所を見届けたい。向こうでは観光産業が地域の経済を担っている。多くの人が集まる祭りなどもその一つ。次回はゆりあげ港で8月に開催予定の夏祭りに行き、少しでも後押しできたら」と笑顔を見せる。