大須商店街仁王門通沿いにある「描けて読める」漫画喫茶「漫画空間」(名古屋市中区大須2、TEL 052-231-7781)の常連客の一人、棚園正一さんが描いた大須と同店を舞台にした漫画「まんくう」の全国誌掲載が決定した。掲載が予定されているのは「漫画アクション」(双葉社)2月21日発売号。
2010年10月にオープンした同店に、棚園さんはオープン当初からずっと通っているという。「店長の内藤さんと知り合って店のことを知った。当初はこんなにガッツリ通うつもりもなく、ふらっと顔を出してみただけだったが、とても居心地がよく、気付いたら週に4~5日は通うようになっていた」と笑う。
昨年夏から構想を練っていたという「まんくう」の主人公は、大須周辺で働くサラリーマンの川島。ある日ひょんなことから訪れた「漫画空間」で、新たに出会った仲間と共に漫画を通して新しい自分を見つけていくというストーリー。過去に、少年ジャンプの赤塚賞と手塚賞の佳作など11回の賞を受賞したことがあるという棚園さんの画力が読み手を漫画の中の世界に引き込む。作中には、舞台となる大須商店街の景色が忠実に描き込まれているのも特徴。
「漫画の掲載までには、編集者の方に原稿を見せ、ある程度修正を加えながら掲載に向かうという流れが常だが、今回は手直しすることなく、描き上げたそのままを載せてもらえることになった。そうしたことはとても珍しい」と棚園さん。「ストーリーを通して伝えたかったことは、やりたいことを、形になるかどうか関係なく打ち込むと、つまらない毎日も楽しくなり、街が色付いて見えてくるということ。ストーリー冒頭の主人公みたいな心境の人はとても多いと思うので、多くの方に読んでもらえれば」と話す。
「漫画空間(まんくう)に出合うまでは、自宅やファミレスなどで漫画を描いていた」という棚園さんだが、今ではまんくうが最も集中できる場所になっているという。「ストーリーの相談などは常連仲間で行うことも」と話すのは同店オーナーの内藤泰弘さん。「ネームを見せ合いながらアドバイスし合うこともしばしば。みんなで集まって『あーでもない、こーでもない』と熱くなる夜もある」とほほ笑む。昨年は常連客の5人が漫画賞を受賞したり、担当がついたりしたという。「アイデアの選択肢が増えるので、ここでの作業は楽しい」と棚園さん。
「今後は名古屋を舞台にした連載漫画を描きたい」という棚園さん。「名古屋は、東京などの都会よりも人同士の関係が密接だが田舎よりはクール。その独特な人との距離感を捉えながら、人との関係性をうまく表すことができるストーリーを描きたい」と意気込む。「今は連載用のネームを提出しているところ」だという。「より多くの漫画家志望の人が集まる空間になれば」と内藤さん。
同店の営業時間は10時~23時。