大須の映画上映スペース併設カフェ「Theater Cafe(シアターカフェ)」(名古屋市中区大須2、TEL 052-228-7145)で11月23日から、映画「Good Luck 恋結びの里」が公開される。公開に先立ち、来名した瀬木直貴監督が作品の見どころを語った。
「Good Luck ~」の舞台は鈴鹿山脈の麓に位置する三重県菰野町。豊かな自然と歴史ある温泉街で、少年の初めての恋に対する戸惑いや家族の絆を描く。オーディションで選ばれた主演の山本正成君は名古屋出身。映画は今年3月に三重県で公開。名古屋での上映は初めて。
小学生の修は同級生の理央に恋心を抱いているが、思いをなかなか伝えられない。やがて理央が秀才でスポーツ万能の秀一と付き合っていることを知り、落ち込んでしまう。そんな時、名古屋に就職してから連絡がなかった姉・有美が、父と同じ年齢の婚約者を連れて帰郷する。
瀬木監督は「ラーメン侍」「Watch with Me~卒業写真~」など、地域のコミュニティーと自然を舞台にした叙情的な作風の映画作りに定評がある名手。本作でも美しい自然や街の風景に加え、キツネの嫁入りの伝説や恋結びのパワースポットなど菰野町の魅力をふんだんに映画に盛り込んだ。
「企画の平野清高さんはもともと名古屋の方で、病気で何度も手術を受けた後、菰野に引っ越した。ゆったりとした空気の中で健康を回復し、恩返しのつもりで映画作りを思い立ったのが始まり。僕に声が掛かったのは、たまたま祖父母が菰野に住んでいたので、少年時代に野山や川で遊んでいたから。僕自身、ここでの記憶をもとに映画を撮りたいと思っていたので、引き受けた」と映画が生まれたきっかけを話す。
みずみずしい演技をする子どもたちの脇を、松永博史さん、鈴木砂羽さん、鈴木一真さんら実力派の俳優が固めた。主演の山本君は現地で行われたオーディションに参加し、主役の座を射止めた。「選んだ理由は顔と目。人間には相手の表情や目を見て気持ちをくみ取る能力がある。だから表情がはっきりしていて、目に力がある山本君になった」
監督がこれまで撮った14本の映画は、全てオールロケ。いつも地域に根を下ろしながら映画を撮っている。「物語にその土地に暮らす人々のメンタリティーを描き込むことを大事にしている。方言の徹底などもしっかりやるが、それは表面の部分。大切なのは地元の言葉に宿っている精神文化を、映画に反映させること。地域性を掘り下げることは、普遍性につながる」と映画作りでこだわっている部分を教えてくれた。
現在、名古屋での映画企画が進行中。舞台は大須商店街になりそうだという。「映画はそこに住んでいる人が迎えてくれて、初めて作ることができるもの。名古屋とご縁ができたことを、うれしく思っている。大須は街の人たちの努力で魅力的になった場所。ここで生きてきた人たちの体験や記憶、今の街の活気を取り込んだ、名古屋らしい映画にしたい」と意気込みを語った。
最後に監督は「偶然、映画で描かれている季節にぴったりの時期に、名古屋での公開となった。人、家族、地域の絆の大切さを伝える映画。子どもから大人まで楽しんでもらえる作品なので、気軽に見にきてほしい」と来場を呼び掛けた。
料金は1,500円(1ドリンク付き)。上映時間はホームページを参照。上映期間中、同店ギャラリースペースでは「菰野市ロケ地マップ」を展示する。今月24日には監督の舞台あいさつが行われる。