栄の映画館「センチュリーシネマ」(名古屋市中区栄3)ほかで11月15日から、映画「花宵道中」が上映される。公開に先立ち、主演の安達祐実さんと豊島圭介監督が来名し、会見を開いた。
同映画は第5回「女による女のためのR-18文学賞」で大賞と読者賞をダブル受賞した宮木あや子さんの同名時代小説が原作。江戸時代末期を舞台に、遊女たちの美しく、切ない生きざまを繊細に描き、多くの女性読者の支持を得て、12万部を超えるヒット作となった。
七歳で母を亡くし、遊郭「山田屋」に引き取られた朝霧(安達さん)は、店一番の人気を誇る遊女となる。朝霧が年季明けで自由の身になるまで残り1年となったころ、吉原で大火が発生。遊女たちは吉原の外の仮宅に移される。ある日、神社の縁日に出かけた朝霧は、京からやってきた染物職人の半次郎(淵上泰史さん)と出会い、互いに引かれていく。
安達さんは「家なき子」以来、20年ぶりの映画主演。芸能生活30周年を迎える作品として遊女の物語を選んだ。「姉御ながら少女のようでもある朝霧は、自分のルックスを存分に生かすことができる役だと感じた。遊女の物語だが、どろどろとしたドラマではなく、純愛を語っている作品」と原作の魅力を語る
ホラーからコメディーまで多彩な作品でメガホンを執ってきた豊島監督にとって、時代劇は初挑戦。「初めてで不安もあったが、安達さんの渾身の作品を監督するのは誰にも譲りたくなかった」と話す。
役への取り組みは、挑戦した部分が多かったという安達さん。「いつもは役をもらうと、音程を考えながらセリフを作ることが多い。どうしたら聞き心地がいいか、長いセリフをどうしたら聞いてもらえるかを考える。今回はそういう技術的なことを全て排除して演じてみた。撮影中は不安で、監督に細かく相談した」
豊島監督は「一つ一つの演技というより、今回の役を演じるにあたってのアプローチについてたくさん話し合った。見たことのない安達祐実を見たかったので、彼女がいっぱい持っている引き出しの中ではできない演技をさせた。普通にやれば100点の演技ができる女優さんなので、120点の演技でなければできないようなシーンになるように台本を作った」と話す。
安達さんは「今まで30年やってきて、積み上げたもの、絡みついているものがあったからこそ、壊す機会を得た。何もなければ壊すことはできない。これまでの30年の集大成の映画ではなく、今までやってきたことを思い切り蹴り飛ばして、次に進むための第1作になった」と笑顔を見せる。
安達さんが芸能界に入ったのは2歳の時。コマーシャル出演から始まり、32歳にして芸能生活30周年を迎えた。「気が付いたら仕事をしていた人生。プライベートな時間はほとんどなかったし、人生を語る時には、ほぼ仕事でしか語れない。いろんな局面で大変なこと、苦しいこともあったが、今ここにいられるのは今までの日々があったからだと思う。一つ一つの瞬間が私にとってすごく大事。後悔も成功も、一見ネガティブにとらえがちなことでも、すごく大切に思っている」と振り返る。
最後に安達さんは「切なくなったり、悲しくなったり、幸せになったり。見てもらえたら何かを感じてもらえる作品に仕上がっている。映画を宣伝する時に自分がどれだけ頑張ったかは関係ないことだが、『体張りました』と言いたい作品。人を愛する気持ちはかけがえのないものだと感じてもらいたい」と映画の成功を祈った。
豊島監督は「時代劇は高齢者ファン向けとのイメージがついているかもしれないが、この映画はいろいろな世代の方に、男女問わず見てもらえる恋の映画。大人はもちろん、若い人にも見てもらいたい」と多くの来場を呼び掛けた。