「名古屋テレビ塔は大好きです。子どものころからよく見ているし、何よりもあの銀色のカラーリングがすてきだと思う。青空にそびえ立っているのを見るのは今もとても好きです」と古橋さんはテレビ塔への思いを語り始めた。
テレビ塔での思い出について、「中学生のころなどは、お金もあまり持っていないので友人3~5人で時間をつぶしによくテレビ塔へ登っていた記憶があります」と振り返る。「高いところが大好きだったし、何よりも当時はテレビ塔より高い建物がなかったから。見晴らしの良いテレビ塔の上では、とても開放的な気分になれたので、テストの出来の話をしたり他愛(たあい)もない話をしたりしていました。建物的にはとてもすごいものなのに、生活の中に入り込んでいて自由に使えることに気持ちが高揚していたことを覚えています」と話す。「入場料も安く、誰でも受け入れているその姿勢は、とても優しいなと感じていました」。
今後のテレビ塔のあり方について古橋さんは、「基本的には、図書館や観光ビューロー、美術館など公共施設として残してもらえたらと思っている」と話す。「費用対効果などを考えずに、もっともっと敷居を下げて、老人も若い人も誰もが行こうと思う場所にしてほしい。例えば名古屋市役所の建物を存続させるのと同じような費用の掛け方をして観光拠点にしては」とも。「そのためにも、久屋大通公園の整備も必要」と古橋さん。「歩道から公園の中がもっと見渡せるようになれば、中で行っているイベントの様子もわかって、もっと活気ある物になるのでは」とも。
「名古屋の人は自分たちの街のことを『特徴がない街』と思っている節があるけど、外の人から見ると、かなり特徴がある街のようだ。それは、名古屋メシ人気を見ても、観光客の増え方を見ても顕著」と古橋さん。「名古屋の人がいまいちこの街を誇りに思えないのは、やはりここに住んでいる街の人たちの問題なのではないかなと思います。『名古屋は小さいし』と言っても、多くの日本人が憧れるパリやニューヨークなどは、行ってみると本当にコンパクトな街で、まさに名古屋サイズ(笑)。名古屋の人は外の世界を知らない人が多くて、ここの良さを知らないのでは」とほほ笑む。
「例えば、パリに住んでいる人は『パリの人』の顔をしているし、サンフランシスコに住んでいる人は『サンフランシスコの人』の顔をしている。みんな『I love 自分の街』という顔。でも、名古屋にはそういった空気がない気がします。とってもステキな街なのに」と古橋さんは続ける。
「もしかしたら、街のアイデンティティーに気付くのは、名古屋のことを知り過ぎている地元の人たちよりも、よその地域から来た人たちなのかもしれない。『自分の街はこういった魅力があるのか、こういった特徴があるのか』と気づかせてくれる他の土地から来る人たちに、もう少し優しくなれたら、名古屋の街はもっと面白くなるのでは。『名古屋=排他的』と言っている場合ではないですね。他の地域の人たちが集る、憧れや羨望が集まる中心に名古屋テレビ塔がなってくれると、この街はどんどん面白くなっていく気がします」
文/サカエ経済新聞 青木 奈美