「2年前に舞妓になるために新潟から名古屋に来ました。名古屋に来る際にまず、イメージしたのはやはり、名古屋城と名古屋テレビ塔でした」と話し始めたゆき乃さん。「お座敷に出るためには名古屋のことをよく知らないといけないので、名古屋の文化や歴史をたくさん勉強しています。もちろんテレビ塔にも登りました。街を見下ろせるタワーならではの、あの感じは楽しくて好き。旅行に行っても必ず、その土地にある塔のような展望施設には登りたくなるタイプ」とほほ笑む。
「でも、実際に登ってみて少しがっかりしたことも…」とゆき乃さん。「展望スペースが恋人のための空間みたいになっていて(笑)。私は一人で行ったのですが、少しいたたまれない気持ちになってしまいました…。夜景を楽しみに登ったのに、南京(なんきん)錠もたくさん付いていて、せっかくの眺めも満足できず…」と振り返る。
「どうせいろいろと変えていくなら、若い人が率先して登りたくなるような仕掛けをしてほしい。例えば、展望スペースを有名デザイナーに自由に演出してもらう機会を作るとか、美大生の人たちの発表スペースにするとか、演奏会を開くとか、空の写真展を行うとか…お金をかけなくても、工夫次第で面白いことがたくさんできそう。テレビ塔はまず中身を面白くすることが大切なのでは。『あそこに行ったらいつも何か楽しいことがある』と思えるような。テレビ塔はまだ十分そういった余地があると思います」と力強く話す。
さらに、「後はやはり、下の公園。お稽古する場所がテレビ塔の近くなのですが、着物を着たままで夜に久屋大通公園を歩く気にはどうしてもなれない。公園が怖くなくて、気持ちよい空間になるだけでも、全然違うのでは」と続ける。「もしお金をかけて改築するなら、ライトアップのバージョンを増やしても楽しいかも(笑)」とも。
「大須や円頓寺、長者町や住吉など、街づくりのために頑張っている人たちがいます。リーダーもちゃんといる。でも、栄はそうした活動がまだまだ弱いなと感じます。名古屋の中心はやはり『栄』だと思っているので、そうした動きが活発になれば良いのに」とゆき乃さん。
「名古屋は何より、人がすてきな街。名古屋のために頑張ろうと活動している市民の人たちに、この2年間、たくさんお会いしました。その中には若い方もたくさんいらっしゃって、その『動き』には私も刺激を受けています。やはり市民の動きが栄の街を変えていくのでは。私もどうしたらもっと力になれるか試行錯誤しています」
文/サカエ経済新聞 青木 奈美