学ぶ・知る

錦のギャラリーで被災地の子どもたちの書展-矢野きよ実さんが企画

毎月被災地で書の指導をしている矢野きよ実さん。セントラル・ギャラリーで

毎月被災地で書の指導をしている矢野きよ実さん。セントラル・ギャラリーで

  • 0

  •  

 中京圏を中心に活躍するタレントで書家の矢野きよ実さんが2月25日、セントラル・ギャラリー(名古屋市中区錦3)、東日本大震災で大きな被害を受けた陸前高田市の小学生らがしたためた書の展示を始めた。

[広告]

 震災が起こった1カ月後に被災地に赤十字のスタッフと共に行ったという矢野さん。「炊き出しなど何かお手伝いできることをと思って被災地に入ったが、縁あってすずりの産地で有名な岩手県の雄勝町に行く機会があった」と振り返る。避難所で知り合った硯(すずり)協会の理事と縁ができたこともきっかけとなり、7月に3校の小学生たちと共に書を書く活動を始めた。

 「普通『習字』というと、お手本があって、きれいに字をかくことを目的とするが、私の場合は立って、心と腕を直結させるような感覚で文字を書いていく。そうした書き方を少し子どもたちに伝えて、みんなで書を書いた」と矢野さん。

 「自由に好きな言葉を書いてみようと促すと、子どもたちはみんなつらい現実と向き合う言葉を書いていった」と矢野さん。「お父さんを亡くした子は力強い文字で『父』と書き、お母さんが行方不明の子は「友」と書いたり…。「泣」という文字を書いた子もいた。とにかく最初はみんなつらいことを書いていた」と話す。

 「ひとしきりつらいことを書くと、次は生きている家族のこと、村のことを表す言葉を書き、それもひとしきり書くと、次は『すし』『自転車』といった自分たちが好きなことを書いて、『あーすっきりした!』と言うの」。「そうした姿を見てわかったのは、子どもたちの周りの大人も被災しているわけで、先生や親たちと会話をしながらつらかったことを振り返り気持ちの整理をする機会が全くなかったのだということ」と矢野さん。「子どもたちは書を通して、他の地域からきた私につらい気持ちを渡してきたのだと感じた」という。

 「気持ちを吐き出すように書を書いた子どもたちの表情は、書く前と比べるととても晴れやかになっていた」という。現在も毎月被災地に行き、さまざまな小学生に書の指導をしている。「まだ中学生の子たちと書を書いたことがないので、次回は被災にした中学生のみんなにも書を教えてあげたい」と話す。

 「被災地の復興はとてもゆっくりだが、進んできている。けれども、心の復興はまだまだ。今の子どもたちは、10年後、20年後に大人になって頑張ってくれているはず。今の大人にしてほしことは、この震災のことを忘れないこと」とし、「名古屋にいる皆さんは、震災のことを忘れずに元気でいてほしい。そうすれば、いざとというときにとっさの行動ができるから」と呼び掛ける。

 会場には、被災地の子どもたちが書いた力強い書が並べられている。開催時間は10時~21時。入場無料。3月4日まで。

エリア一覧
北海道・東北
関東
東京23区
東京・多摩
中部
近畿
中国・四国
九州
海外
セレクト
動画ニュース