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サーフショップ営むろう者を追ったドキュメンタリー「珈琲とエンピツ」、栄で公開へ

記者会見を開いた今村彩子監督

記者会見を開いた今村彩子監督

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 伏見の映画館「伏見ミリオン座」(名古屋市中区栄1、TEL 052-212-2437)で6月30日から、聴覚障がい者と聴者とのコミュニケーションを描いたドキュメンタリー映画「珈琲とエンピツ」が公開される。映画公開に先立ち今村彩子監督が会見を開いた。

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 今村監督は、ろう者・難聴者を題材としたドキュメント映画を制作している映像作家で、自身もろう者。愛知教育大学在学中にアメリカに留学し、映画やアメリカの手話、ろう文化を学んだ。現在は名古屋在住。映像制作のほか、全国各地で講演、上映活動を行っている。

 「珈琲とエンピツ」は静岡県湖西市でサーフショップ&ハワイアン雑貨店を営むろう者の太田辰郎さんの日々を撮影したドキュメンタリー。サーフィンを愛する太田さんは長年の夢だったサーフショップを開き、障がいを乗り越えてサーフボード職人になる。太田さんは来店者にハワイのコーヒーを振る舞い、紙と鉛筆で筆談を始める。最初は戸惑った来店者も徐々にリラックスし、太田さんに引き込まれていく。今村監督は2年間にわたり名古屋から静岡県に通い取材と撮影を重ね、太田さんの言葉を越えたコミュニケーションをカメラに収めた。

 今村監督は「この映画は障がい者や福祉ではなく、コミュニケーションをテーマにしている。今の社会はパソコンや携帯電話など顔が見えないままのコミュニケーションで、人間関係が薄く弱くなっている。太田さんは来店客と顔を見合わせて会話したり、筆談したり、身ぶり手ぶりをしたりして接する。その大切さを伝えたいと映画を撮った。この映画で皆さんのコミュニケーションは本当に伝わっているのかを問い掛けたい。一般の街を歩いている人たちに、一番見てほしいと思っている」と話す。

 今村監督は同作で初めて自らの声でナレーションを担当した。「初めはナレーションを自分でやる予定はなかった。でも私が一番伝えたいことはコミュニケーションであり、太田さんの壁を作らないところ。太田さんは声でのコミュニケーションは得意ではないけれど、通じれば自分の声をどんどん使う。太田さんの姿を伝えようとする中で、私も映画を撮りながらコミュニケーションの技術を学んだ。そしてナレーションに自分の声を入れようという風にだんだん変わっていった。とても中身の濃い2年間だった」と振り返る。

 伏見ミリオン座では同作の上映のほか、一般の人にろう者、障がい者のいろいろな生き方、仕事を知ってもらうためのトークイベントや参加型手話体験教室などが行われる。関連イベントは映画鑑賞券で参加可能。手話通訳が同席する。

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