名古屋各地にある商店街の昭和時代の姿を紹介した書籍「名古屋なつかしの商店街」が8月25日、風媒社(名古屋市中区上前津2)から発売された。
同書は2008年に休刊した新聞「名古屋タイムズ」に昭和20~50年代にかけて掲載された商店街の紹介シリーズをまとめたもの。同紙の記事資料を保存、管理する「名古屋タイムズアーカイブス委員会」が、当時掲載された写真、手描きのイラストマップなどを再構成。大須、円頓寺など約50カ所におよぶ通りの店舗、人々、記者が出合ったこぼれ話などが多彩な視点で紹介されている。また、商店街に縁の深い人々のインタビューなども加え、昭和時代の懐かしい風景や大衆文化を現代に伝えている。
編集、執筆を担当した同アーカイブス委員会の長坂英生さんは、元名古屋タイムズ社会部デスク。「休刊後、出版や展覧会などで名古屋タイムズの成果を伝えてきた。その際、商店街やイラストマップはとても評判が良く、まとめて本にしてほしいという声も頂いた。風媒社の方からも書籍化を勧められ、今回の出版となった」と制作の経緯を話す。
各商店街の通りを描いたイラストマップは、当時と同じ手描きのものを掲載している。「現在の印刷物に描かれるマップとは異なり、手描きであるため、温かみと味わいがある。マップには屋号、店名以外にもいろいろな書き込みがあり、眺めるだけで楽しくなるはず。こうしたマップがまとまって残っている例は少ないのではないかと思う。考現学、昭和庶民史、都市学などの資料にもなっている」
創刊以来、一貫して大衆文化を報道し続けた名古屋タイムズでは、戦後復興時の昭和20年代から、高度成長期に至る昭和40~50年代、そして平成と、時代に沿って何度も商店街を題材にしてきたという。「本に掲載した商店街の記事は、様々な記者がそれぞれ腕を競うように書いている。しっかりと取材しているので、当時の人々の生の声が記録され、面白い街のネタが発掘されている」
長坂さんは「商店街に住んでいた人、利用していた人は、ぜひ読んでもらいたい。また、研究者、行政関係者ら専門家にも参考になる本になっている。あらためてマップを手に現在の商店街を歩いたが、さまざまな発見があった。街歩きのお供にも使ってほしい」と同書の魅力をアピールした。
仕様はA5判、148ページ。価格は1,620円。