栄の映画館「名演小劇場」(名古屋市東区東桜2)で5月23日、アニメ映画「百日紅~Miss HOKUSAI~」が公開される(全国ロードショーは5月9日から)。公開に先立ち、原恵一監督が来名して会見を開いた。
杉浦日向子さんの同名漫画が原作。浮世絵師の女性と父・葛飾北斎の生きざまを、取り巻く人々や江戸の風俗、移りゆく四季とともに描く。主人公お栄の声を杏さん、北斎を松重豊さんが担当。「クレヨンしんちゃん」シリーズ、「河童のクゥと夏休み」「カラフル」などを手掛けた原監督が5年ぶりに長編アニメのメガホンをとった。
お栄(杏さん)は父であり師匠である北斎(松重さん)とともに、雑然とした家で絵を描いて暮らしている。浮世絵師の善次郎(濱田岳さん)や国直(高良健吾さん)と騒いだり、離れて暮らす妹・お猶(清水詩音さん)と出掛けたり。吉原、火事、妖怪騒ぎと喜怒哀楽に満ちあふれた江戸の町で、お栄は人生を謳歌(おうか)する。
杉浦さんのファンだという原監督。「杉浦さんは江戸の見方を変えた作家。それまでは侍が主人公の作品が多かったが、杉浦作品では市井の町人たちが楽しくその日暮らしをしている。彼らが日々楽しむ食や季節は、現代の僕らが味わえない豊かさ、華やかさがあったと教えてもらった。完璧な原作をいかに自然に映像化するかがテーマ。ハードルは高かったが、今までのキャリアで培ったものを全て投入してチャレンジした」と話す。
「初めて女性の観客を意識した映画」とも。「昔話ではなく、今の人にも共感してもらえる作品にしたかった。お栄は江戸時代では珍しい、職業を持った女性。彼女の仕事の悩み、恋の悩みは現代の女性たちにも共感してもらえるはず。杏さんの声が付いた瞬間、生意気で鼻っ柱が強いだけじゃない、純情で臆病なところもある女性・お栄が誕生した」
昨年、実写映画を監督し、5年ぶりに取り組んだアニメ作品。「実写を経験して、カメラマンが切り取るフレームやカメラワークに感心した。その経験もこのアニメに生かした。実写をやってしまうと、アニメ作りはなんて面倒くさいのだろうとも思った。アニメの作業は、目の前に白い紙の荒野が果てしなく広がっているところからスタートする。その荒野を全て手描きの絵で埋めていかねばならない。でも、絵を直す自由度や、アニメでしかできない表現もある。アニメだからこそ作れた華やかな江戸の街、豊かな四季を見てもらいたい」と呼び掛ける。