かつて名古屋を走っていた路面電車と街の風景を写した写真集「市電残像 名古屋に路面電車があった頃」が2月初旬、人間社(名古屋市千種区今池1)から発売された。著者は同市在住の元美術教師で写真家の加藤幹彦さん。
加藤さんは教師だったころから市電や古民家などを撮影。写真、絵の個展や著作などで変わりゆく名古屋の風景を紹介している。同書では名古屋市民の足として活躍していた「名古屋市電」が1974(昭和49)年に廃止されるまでの昭和40年代の数年間を収めた写真83枚を掲載。当時の街の空気や人々の暮らしを伝えている。
名古屋の路面電車は1898(明治31)年に「名古屋電気鉄道」により開通。1922(大正11)年に市営化され「名古屋市電」となり、ほかの路線を吸収して拡大した。最盛期の1951(昭和26)年には100キロメートルを超える長さで400両以上の車両が運転していた。自動車の増加や地下鉄の建設により、徐々に廃止が進み1974年、歴史に幕を下ろした。
編集を担当した樹林舎の山田恭幹さんは「写真一枚一枚に家並みや川辺、林といった風景や生活する人たちが配置されていて、その中を走る電車の構図がとても自然。本職は美術の先生というだけあって『美しい市電の姿』を楽しめる写真集になったと思う」と話す。
仕様はB5変形判、95ページ。価格は1,944円。