「NHK名古屋放送局」制作のラジオドラマ「桜を伐(き)る」が5月14日、「NHK FM」で全国放送される。放送に先立ち、出演する佐野史郎さん、木内みどりさん、山田昌さんが同局で会見を開いた。
同局が1985(昭和60)年より行っている「創作ラジオドラマ脚本募集」の最優秀賞受賞作をドラマ化する同作。過去には「野ブタ。をプロデュース」の木皿泉さん、「トライアングル」の水橋文美江さんらが入選している。2015年度は152編の応募があり、松本光雄さんの脚本が受賞した。
ある朝、庭から聞こえる奇妙な音で目を覚ました敏男(佐野さん)と和子(木内さん)夫婦は、母・ハツ(山田さん)が亡父の植えた桜の木を切っている姿を見つけて驚く。母の認知症が分かった後、亡くなった父の愛人、自分自身の不倫、疑い始める妻などによって、敏男は心理的に追い込まれていく。
「今という時代をすごく感じる脚本」と佐野さん。「この家族のように世の中が皆、不安を感じながら生きている。この夫婦は内側では破たんしているが、それでも続けるにはどうすればいいのか考えている。生きている限り瞬間、瞬間に向き合っていけば、実りのある人生になるのでは、という思いをシナリオから強く感じる」と絶賛する。
「ラジオドラマが好きなので、楽しんでいる」と木内さん。「今のテレビは文字の説明が入ったり、音楽で盛り立てたり、セットの色も派手だったりと、少し騒々しいところもある。ラジオは声が頼りなので、耳を澄ませて聴かなければならない。情報過多でふさがっている感受性を取り戻すには、ラジオドラマを聴くのが一番いいと思う。今回の脚本は聴いた人それぞれで、印象がいろいろ変わるような面白さがある」と話す。
山田さんは「昔、番組を聴いた人から、あの後はどうなったのかと電話が掛かってきたことを思い出す。ラジオドラマが人の心に豊かなものをもたらす時代を見てきた。今回は脚本について討論する2人やスタッフの姿を見られて、とてもうれしく、わくわくしている」と笑顔。佐野さんは「スマートフォンやデジタル機器の発達で、ラジオを聴く人が増えている。ラジオドラマもいいものを作れば、どんどん増えていくはず」と話す。
最後に佐野さんは「ホームドラマでありながら、サスペンス、ミステリー的な魅力もあり、多面的な楽しみ方ができる作品。どうなるのかをわくわくしながら聴いていただけたら」と呼び掛ける。
放送時間は22時~22時50分。