映画「はるヲうるひと」の舞台あいさつが6月12日、「センチュリーシネマ」(名古屋市中区栄3)で行われ、俳優で監督を勤めた佐藤二朗さんが登壇した。
舞台あいさつで映画内容やロケ地に関する思い出話などで観客を楽しませた佐藤二朗監督
佐藤さんが原作・脚本・監督を手掛けるほか、自らも出演する同作。佐藤さん主宰の演劇ユニット「ちからわざ」で2009(平成21)年に初演、2014(平成26)年に再演された舞台を映画化したもの。
架空の島にある置屋「かげろう」で生きる人間の物語。「かげろう」を仕切る凶暴凶悪な性格の長男・哲雄を佐藤さん、置屋の呼び込みや遊女の世話をし哲雄にこびへつらい子分のように従っている次男・得太を山田孝之さん、持病を患い床に伏せる長女・いぶきを仲里依紗さん、「かげろう」の一番古株の遊女を坂井真紀さん、客の一人を向井理さんが演じる。舞台版からの出演者も出演する。
撮影は全編、愛知県の南知多で行われたという。「いくつか候補があったロケ地の中で、一番よかった場所だった。ロケハンで『はるヲうるひと』のために建てたの?と思うほど、劇中で出てくる食堂、女郎部屋、待合室、いぶきの部屋などをイメージできる建物に出合い、全て同じ建物で撮影できた」とエピソードを披露。静かなオフシーズンの撮影で、作品の世界観に浸れる環境だったという。
映画化したことについて佐藤さんは「泣き虫でそのくせよくほえるどうしようもないチンピラを演じる山田孝之さん、内圧を抱える仲里依紗さん、姉御肌で体を張ってみんなを守っているようで誰よりも弱かったという坂井真紀さんを見たかった」と振り返り、「俳優の芝居が好き。魂か何かに触れた時の俳優の顔が見たい、芝居が見たい、あるいは自分がやりたいという思いで、13年前にこの本を書いた。13年の時を超えて、当時自分が演じた得太を山田孝之さんが『得太に寄り添いたい』という気持ちで共鳴してくれて映画が仕上がった。感慨深い」と話す。そのほか、舞台ではなかったクライマックスのシーンのエピソードや、ロケ地に関連する学生時代の思い出話などにも触れ、観客を楽しませた。
映画公開から約1週間がたち、SNSなどで感想が出始めていることを受け佐藤さんは「熱量のある感想が多くびっくりしている。自分でリツイートして紹介したいくらいだ」と話す。「不快に思う人もいるだろう。いろんな感じ方があると思う。一生懸命にやりたいことをやった。ぜひ見ていただければ」と呼び掛ける。