2024年2月29日に閉館した伏見エリアのコンサートホール「しらかわホール」(名古屋市中区栄2)が3月24日、再開館する。再生を担う新会社「SKI」(栄2)が2月12日、プロジェクト発足の経緯やリニューアル内容を発表した。
再生のきっかけは、ビル売却に伴い行き場を失ったホールのピアノ「スタインウェイ」だった。同ホール館長の荒川由紀さんによると、引き取りの提案を受けた関係者がホールの存在を知り、ホール状態の良さをも確認。さらに閉館を惜しむ国内外の音楽家の声や存続を求める市民の声を知り、「なくしてはいけない」と再生を決意したという。賛同する個人や企業と共創会社「SKI」を設立し、子会社「SHIRAKAWA」が取得したビルのホール部分を賃借して運営する。
荒川さんは「クラシック音楽の聖地として、若い演奏家が夢を描き、誰もが気軽に文化と触れられる場として未来へつなげたい」と話す。ホールを起点に人や街、文化を結ぶ「ハルモニアタウンしらかわ」構想も掲げ、近隣文化施設と連携した地域活性化を目指す。公演のない日の館内カフェ営業や公開空地の活用も検討しており、将来的には演奏者への会場無償提供など、新たな鑑賞機会の創出にも意欲を見せる。
設備は現代基準に合わせて更新する。空調管理システムの最新OS化、館内Wi-Fi整備、トイレの洋式化と女性用・バリアフリー用の増設、2階席階段通路側の転倒防止策などを行った。鑑賞環境改善として、2階正面席には視界と安全性を両立する手すりを設ける。舞台が見えにくかったサイドバルコニー席に新席種「ファンボックス」を導入。2階両側に8室(各定員6人)、1階最後部に特別室1室を設け、このうち4室と特別室はガラス張りの防音仕様とする。高音質スピーカーや演奏者の表情などを映すズーム映像機能を備え、医療機器利用者や小さな子ども連れなどが周りに気兼ねなく鑑賞できるようにするほか、飲食や会話を楽しみながら利用できる空間とする。総座席数は631席で、ファンボックス設置で従来に比べ約1割減となる。
音響は、開館当初にも携わったヤマハのチームが再監修。シミュレーションによる残響時間は、1.8~2秒から2~2.3秒程度に向上する見込みで、「教会のような奥行きのある響き」が期待されている。
再開館記念公演は、3月24日の「サー・アンドラーシュ・シフ ピアノリサイタル2026」を皮切りに全5公演を予定する。貸しホール利用は、仮予約を含めて12月までに約100件が入っているという。設備更新費に充てるため、2月16日から4月17日まで、目標1,000万円のクラウドファンディングも実施する。