1987年から栄で20年間運営してきたフリージャズバー「KUKU(クク)」(名古屋市中区栄4、TEL 052-252-0669)が10月31日で閉店する。約12坪の店内にはドラムセットやギター、キーボードなどがおいてあり、ミュージシャンや音楽愛好家などが集まる店として長年親しまれてきた。毎週日曜日にはライブセッションが行われていた。
閉店について、同店オーナーの村上さんは「20代の人たちと30代以降の人たちでは、音楽的にも考え方的にも大きなギャップを感じることが多い。そのため、自然と自分の年齢に比例して客層も上がっていったが、こうしたバーなどは20代の人たちも視野に入れていかないとやっていけないのかもしれない。家庭を持ったり出世したりすると、遊び方もかわるから」と振り返る。
1987年11月20日に栄4丁目にオープンした同店は5年前に浸水の被害を受け、現在の場所に移転した。もともと「民芸調の居酒屋だった」(村上さん)という同店に、ギタリストが来店し時々演奏をしていた。その演奏が好評で、同店で演奏したいという人が多く集まるようになり「フリージャズの店」というスタイルになっていったという。
自身もジャズドラマーの村上さんは「もともとジャズは好きで、ジャズから始まった店だが、お客さんがこの店を作りあげていったと言ってもいい」とし、「芸能人の人もよく来店したりしていた。毎日何かしらのハプニングがありとても楽しかった」と振り返る。今後は「少しのんびりしたら、ラーメン店などを展開してみたい」とも。
閉店を目前にして、同店になじみのある客が連日足を運んでいる。店内の備品などを「記念に」と持ち帰る客も少なくない。
常連客の1人で主に名古屋で活躍するギタリストKei(ケイ)さんは「大袈裟でなく、KUKUが無くなってしまうことは名古屋の音楽文化にとって大きな損失。他の地方から来てこの店で名古屋独自の即興音楽シーンに触れ、その魅力に取りつかれたミュージシャンは数知れない。僕もその一人であり、KUKUがあったからこそ名古屋に住み続けたとも言える。ここを登竜門として育ったミュージシャンの中には即興音楽家として幅広く活躍し国内外から高い評価を得ている人もいる。そうした人材を育むレベルの高い即興音楽シーンが名古屋にはあり、それを支えてきたのがKUKU。巨大な万華鏡を建てては壊すようなことよりも、こうした文化を底辺で支えている場所を支援する方がよほど名古屋にとっていい事なのでは。とにかく一日も早い再開を切に望む」と閉店を惜しんでいる。