建設が進む名古屋市科学館(名古屋市中区栄2、TEL 052-201-4486)新館の世界最大プラネタリウムの外壁ステンレスパネルが6月30日張り終わり、その堂々たる姿が歩行者を驚かせている。
建設中のプラネタリウムのドームの直径は35メートル。これは現在世界最大と言われている愛媛と北京のプラネタリウム(直径30メートル)を抜く大きさで、地元が同館に寄せる期待も大きい。大きな球体は3層に分かれており、6階のプラネタリウム下には展示室などが入る。
「工事はとても順調に進んでいる」と話すのは名古屋市科学館新館整備担当の横井智雄さん。すでにドーム内のスクリーンも張り終え、現在は、床の仕上げといすの設置段階へと入っており、今後投影機などの機材を順次入れていくという。
「世界最大ということは、まだどこも建設したことがない規模のプラネタリウムを作っているということ」と同プラネタリウムのプラネタリウムシステム製造と設置工事を担当するコニカミノルタプラネタリウムの中嶋恭之さん。「どこにもない直径35メートルでの見え方を検証するために、その大きさを想定して様々な実験や工夫を重ねてきた」とし、「作っている側も挑戦しているという気持ち。出来上がりを楽しみにしながら作業を続けている」と汗をふきながら笑う。建設現場となるドームの中は湿度80%、温度35度ととても暑い。作業員はファンが付いた作業服を着て、体の熱を逃がしながら作業を続けている。小まめな休憩と水分補給を取り熱射病対策に気を配る。
上を見上げると視界一面に白いスクリーンが広がるドーム内。「大きいことは、限りなく本物に近い星空に近づけるということ」と横井さん。大きな星空を見上げやすいようにと、ドーム内に設置される350席のいすにはリクライニング機能だけでなく、左右30度に回転する機能も付く。また光ファイバーで一つひとつの星を導く最新の投影機は、星の瞬きまでも表現できるなど、より本物に近い夜空を再現。周囲に設置する6台のプロジェクターによりドーム全体に動画を上映することや、中心に設置する16台のプロジェクターにより朝~夜の街並の変化を映像で演出することも可能になる。
ドーム内の音響は「このプラネタリウムのために開発した」という世界初の音響システムを採用。70個のスピーカーをドーム裏や床などに設置するほか、ウーハーも6台を設置し、立体的な音演出を可能にするという。「これまでのプラネタリウムではドームスクリーンに沿って音が流れるイメージだとしたら、今回は空間を音が自由に動くイメージ」と中嶋さんは紹介する。
「名古屋市科学館のプラネタリウムの特徴は何と言っても『生解説』」と横井さん。6人の解説員が季節のテーマごとに生で解説を行っている同館。来場者の客層などを見ながら話すため一度として同じ解説がなく、全国的にも高く評価されているという。「新しくなっても星空の生解説は続けていく。社会教育施設として最新のプラネタリウムを使い、これからも天文教育を続けていきたい」と意気込む。
これまで使用してきた旧館は8月末まで運営。9月に入り順次取り壊していくため、9月1日からは全館休館する。新館のオープンは来年3月を予定。(COP10開催に併せて10月11日から10月31日までは生命館のみ開館)