栄の映画館「センチュリーシネマ」(名古屋市中区栄3)ほかで2月22日、映画「東京難民」が公開される。公開に先立ち、佐々部清監督が来名して会見を開いた。
同作品は福澤徹三さんの同名小説が原作。ネットカフェ難民の実態や危険なバイトの真実、ホームレス生活など格差社会のゆがみの中でもがく若者たちを描く物語。「半落ち」「ツレがうつになりまして」などを手掛けた佐々部監督がメガホンをとった。
どこにでもいる普通の大学生だった時枝修(中村蒼さん)は授業料の未払いを理由に大学を除籍される。借金を抱えた父親が失踪したため、家賃を支払えなくなった修はアパートからも追い出されてしまう。修はネットカフェに泊まりながら日払いのバイトで食いつなぐが、だまされて入ったホストクラブで高額の請求書を突き付けられ、その店で働くことになる。
佐々部監督は何度もタッグを組んだ脚本家の青島武さんに薦められ、原作を読んだという。「前半は主人公に共感できなくて映画化は無理だと感じたが、読み進めるうちに自分の学生時代とシンクロしてきた。自分も30数年前は地方から東京に出てきた大学生。四畳半一間に住み、時には友達の部屋に転がり込んで暮らした。お金は無い生活だったが、夢はいっぱい語っていた。修たちは夢を全く語ることができず、人とうまくコミュニケーションが取れない。この国はいつの間に、こんな風になってしまったのか。そこを突破口に、できれば最後だけはいちずの光にたどり着くような映画にしたいと考えた」
ネットカフェ難民などの取材は驚かされることばかりだったと監督。「原作が書かれた2007年から撮影までの間でも時代は移っているので、実際にネットカフェやホストクラブを取材した。知らなかったことがたくさんあり、闇の部分はすごいことになっていると驚いた。これは若者たちだけの話ではなく、4年間ネットカフェに暮らし続けている僕と同世代の人もいた。東京では30~40代でも、会社が倒産してしまったら同様になるかもしれない。いろいろなセーフティーネットがあるという人もいるが、大人でも知らないことが多い。生活保護など、さらに今の時代に寄った題材も加えながら脚本を固めていった」
最後に監督は「安倍首相にこの映画を送った。東京五輪招致でおもてなし、と浮かれているが、実は東京には難民のような人が生まれている。若者たちにこんな風にならないでという思いもあるが、それとともにそのシステムを作っているトップの人たち、特に政治家の人たちに見てほしい。ドキュメント的なリアルな部分とエンターテインメント部分のバランスが取れた映画になっているので、多くの人に見てもらえたら」と来場を呼び掛けた。