栄の「丸善名古屋本店」(名古屋市中区栄3)で9月26日、書籍「白く高き山々へ」(ナカニシヤ出版)の刊行記念トークイベントが開催された。
著者の村中征也さんは三重県出身。東海銀行に勤務しながら登山に取り組み、愛知県山岳連盟常任理事、日本山岳会東海支部常務委員を務めた。日本の山々を登った後、58歳で初めてアルプス山脈のマッターホルンに登頂。ミュンヘン留学でドイツ語を学び、60代でアルプスの山々を登り続けた。
同書は村中さんが還暦間近の年齢から「人生の楽しみはこれからだ」と夢を実行に移し、アルプス登山やドイツ語留学でヨーロッパを駆け巡った日々の記録。村中さんが現地で撮影した数々の写真や自ら描いたスケッチが収録されている。
トークイベントには村中さんと中西健夫ナカニシヤ出版社長、日本山岳会の安藤忠夫さんが登壇。登山の楽しさや難しさ、旅の思い出や魅力などを語り合った。
「執筆の動機は交通事故にあったこと」と村中さん。「3年前に乗用車にはねられて入院し、リハビリ含め治療に1年近くを費やした。もう登山ができなくなったので、今までの経験を本の形に残してみようという気持ちになった」と話す。
大量にあった手帳、写真、スケッチを整理して執筆を開始。書き上げた原稿を持って、安藤さんにアドバイスを求めた。安藤さんは「最初は生い立ちから銀行員時代まで、ぎっしり書いた400ページの大作だった。60歳からのアルプス登山や語学習得に絞った方が面白くなると意見を言わせてもらった。書き直すのは苦労したと思うが、魅力的な部分が膨らんだ」と話す。
中西社長は「お2人が持ってきた時点で原稿は出来上がっていて、直す部分はほぼ無かった。私もほとんど同じ時期にヨーロッパを歩いていたので、とても内容に引かれた。文章だけでなく写真もスケッチも村中さんのオリジナルなので、他にはない個性的な山と旅の本になった」と話す。
村中さんは60歳近くなってからの体力作りや語学習得の苦労を振り返りながら、挑戦したからこそ得た友人や体験の素晴らしさを語った。最後にヨーロッパで出合い、練習したというアルプホルンを演奏。「本にまとめてみて、登山も留学も多くの人に支えられたからできたと気付いた」と感謝の言葉を述べ、トークショーを終えた。
中西社長は「山好きが楽しめるのはもちろん、これから登りたいという方へのガイドにもなる内容。仕事、登山、執筆と次々に熱中できる『青春』を見つけた村中さんのバイタリティーに触れ、定年後、第2の人生を楽しむヒントにしてもらえたら」と呼び掛ける。
仕様はA5判、304ページ。価格は1,620円。