栄の映画館「センチュリーシネマ」(名古屋市中区栄3)で7月2日から、映画「海すずめ」が公開。出演の武田梨奈さん、BOYS AND MEN(ボーイズ・アンド・メン)の小林豊さんが名古屋で会見を開いた。
同映画は歴史ある祭を控えた愛媛県宇和島市を舞台に、図書館の自転車課に勤務する若者らの成長を描く青春ストーリー。武田さん、小林さんほか、吉行和子さん、内藤剛志さら実力派俳優が出演。同県出身の大森研一監督が脚本を手掛け、メガホンを取った。
宇和島の市立図書館の自転車課に所属する雀(武田さん)は、同僚の賢一(小林さん)やアルバイトのハナ(佐生雪さん)と共に自転車で街や島を駆け巡り、市民に本を届けている。小説家デビューして上京したものの2作目が書けずに地元に戻ってきた雀は、東京行きを反対していた父とは微妙な関係が続いている。街は「宇和島伊達400年祭」を控えて大武者行列の準備が進むが、お姫様の衣装を復刻するための宇和島藩の資料「刺繍(ししゅう)図録」が図書館で紛失していることが発覚。図書館員たちは図録の捜索に追われる。
演じた役について武田さんは「雀は悩みやプレッシャーを抱え、自分の中でためてしまう女の子。同じような悩みを持つ人は、私も含めて若い世代にたくさんいると思う。監督からは白や黒ではないグレーな部分を演じてほしいと演出があった。私自身悩みながら取り組んだのが、雀のリアルな役作りには良かったと感じる」と話す。小林さんは「賢一は自転車のプロ選手として成功する夢が破れた青年。弱い部分を人に見せたくない、どこにでもいる若者だと思う。雀らとの会話でどんどん変わっていく姿を見ていただけたら」と話す。
自転車に乗るシーンが多かったと武田さん。「ロードバイクは普通の自転車と乗る姿勢が違うので難しかったが、毎日、おいしいグルメを食べて体重が心配だったので、自転車でカロリーを消費した」と笑顔。小林さんも「元ロードレーサー役なので、自転車への愛は表現したかった。美しい風景の中を走るのは、とても楽しかった」と話す。
本作は宇和島藩主の流れをくむ宇和島伊達家13代当主の伊達宗信さんが、企画から映画製作に全面協力。本人役として印象的なシーンに出演している。小林さんは「時代が違えば会うこともできない人。すごく身近でサポートしていただいて、恐れ多い気持ちになった。宇和島の良さを知ってもらいたいとの思いで、いろいろなことを教えてくれた」と話す。武田さんは「街の人から殿と声を掛けられる人なのに、何を食べたいかと、いつも気遣ってくれた。出演もしていただいたが、とても存在感があった」と話す。
最後に2人は「地元愛や家族、友人などいろいろな人の支えがあって人は成長していくということが、リアルに描かれている作品。きっと見ている人の思いとリンクする部分があるはず。派手ではないが、長い時間をかけて愛されるような映画になっている。肩の力を抜いて、家族で見ていただけたら」(武田さん)、「日本が忘れつつあるゆったりした時間の流れや、物事の一瞬一瞬の大切さが描かれている。この映画を見て、温かい気持ちになってほしい」(小林さん)と呼び掛けた。