
江戸・東京の都市空間での人と動物の関わり合いを紹介する展覧会「どうぶつ百景-江戸東京博物館コレクションより」が4月11日、愛知県美術館(名古屋市東区東桜1)で始まった。
7章構成の同展。1877(明治10)年に来日した米国の動物学者が日記に記した、人々が道路に居座る犬や猫を避けて通行する様子や、親しみを込めて動物の名前に「さん」を付けて呼ぶなど、日本人が動物を親切に扱う様子を紹介したプロローグ「外国人が見た日本人と動物」で始まる。
第1章「江戸のどうぶつ」では、江戸時代前期の江戸市街と近郊の景観を取り上げた「江戸図屏風(びょうぶ)」の複製を展示。びょうぶに描かれた、将軍が催したイノシシ狩や鹿狩の様子、荷物や人を運ぶ馬などを見ることができる。「武家と動物の関係が分かる」と同展担当学芸員の岩間美佳さん。
第2章「飼育されたどうぶつ」では、運送・農耕の助けを目的に飼われていた牛や馬などの家畜、狩猟で活躍する犬やタカ、町内で飼われていた町犬(まちいぬ)、愛玩を目的に飼育されていた猫や小型犬、鳥、金魚など描いた絵画で紹介する。岩間さんは「江戸の街で猫は人気のペット。町犬は番犬や子どもの遊び相手など役割がある街の一員のような存在だったようだ」と話す。鳥の飼育も人気で鳥かご職人や、飼い方の本もあったという。当時は愛玩用だったウズラの美声を競う「鶉合(うずらあわせ)」を描いたびょうぶも展示している。
このほか、野生動物を紹介する絵画や、諸外国との貿易を通じて輸入された、日本に生息しないゾウやラクダなどをめずらしい動物を見せる興行の様子が分かる絵画も紹介。岩間さんによると当時は、「ゾウを見ると福を授かる、悪病除けになる」などの宣伝文句と合わせて興行していたという。
第5章「デザインの中のどうぶつ」では、着物やタバコ入れなどの装身具、蚊やりなどの日用品のデザインに動物が使われている、当時使われていた物を資料として展示する。「猫の形をした蚊やりにススが付いていたり、使い込まれている物があったり、動物が身近にあったことを感じる」と岩間さん「人と動物の関わりで、現代と重なるところ、異なるところを感じてもらえるのでは。動物が日常の近いところにいたことが分かる」とも。
展示ではこのほか、「愛知特別編」として、愛知県美術館所蔵の「木村定三コレクション」から、ツルや鳳凰(ほうおう)など「縁起のいい動物」を描いた江戸時代中期制作の絵画紹介も行う。
開催時間は10時~18時(金曜は20時まで)。月曜(5月5日除く)・5月7日休館。観覧料は、一般=1,500円、高・大生=1,000円、中学生以下無料。6月8日まで。