名古屋大学大学院環境学研究科の研究生による、放置自転車をなくすことから考える環境政策実験「名チャリプロジェクト」が12月1日より、栄~大須エリアで始まっている。同プロジェクトは、放置自転車を再利用し、無料で市民に貸し出すもの。同科・竹内教授のもと4人の学生が中心になって行っている。
ゴミ問題や地球温暖化などを考察する竹内教授のゼミでは、名古屋駅周辺の放置自転車の量は全国でワースト1位だという名古屋市の放置自転車の量に着目。放置自転車が撤去される台数は1年間で75,575台。持ち主が現れない自転車は、リサイクルされるものもあるが、埋め立てて廃棄処分されるものも多い。放置自転車の撤去などにかかる費用は年間約2~3億円だという。「発表されている2~3億円という数字は、自転車保管場所として使用している土地の費用などは含まれておらず、実際は10億円程度になるのでは」と、同プロジェクトを中心となって運営している河本さんは話す。
「名チャリプロジェクト」開始のきっかけは、交通渋滞の緩和、CO2の削減などを目指して「自転車を名古屋の地下鉄に持ち込むことはできるか」という竹内教授のテーマ提示。電車での移動先に自転車を持っていくことができれば、放置自転車もなくなり車の利用も減るのではと考えたが、名古屋市の条例では自転車の鉄道内への持ち込みは禁止されていることがわかったため、「だったら、電車を降りた先に自由に使える自転車があればいいのでは」と考えたことからスタートした。
今回展開するのは、学生らが練り上げた企画を実際に行い「需要の数」「貸し出しシステムの是非」「世の中の反応」などを観察するための社会実験。「本来なら地下鉄の出入り口付近に設置したかった」(河本さん)が市の許可が下りず、「ステーション」として貸し出してくれた栄と大須の5ポイントで、ボランティアスタッフの協力を得て自転車の貸し出しを行っている。借りた自転車はどのステーションに返しても良い。
利用者は、用紙に必要事項を記入し本人確認ができるものを提示。会員証を発行し、好きな自転車を選んで利用することができる。早くも就職活動中のリクルートスーツ姿の学生や営業回りの女性会社員などが次々と訪れ、利用している。
「自転車で街を走ることで、車では見過ごしてしまう店舗を見つけたり、徒歩では少し遠いと思われる距離の移動も簡単にできたりと、新たな楽しい発見があることが多い」とし、「放置自転車を減らし環境を大切にすることは、地域の活性化にもつながる」と河本さん。「貸し出した自転車が帰ってこない、壊されるといった問題点も今後出てくるかもしれない。今回の実験ではさまざま問題点なども見えてくるのでは。将来的には今回の反省点も踏まえ、規模を拡大して本格的に運用していくことができれば」とも。
雨天の場合は貸し出しを中止する。12月16日まで。