名古屋花柳界から2年ぶりに舞妓（まいこ）がデビューし、10月5日、お披露目会を行った。デビューしたのは、春日井市出身で現在19歳のひこ乃さん。名古屋市立大学に進学が決まっていたが、わずか3カ月で中退し、中学時代から憧れていたという舞妓になるべく、名妓連（名古屋市中区栄4）の扉をたたいた。

名古屋のお座敷芸「金のしゃちほこ」

　当日は、11時から成田山萬福院（栄5）で芸能上達祈願をした後、先輩舞妓のゆき乃さんや芸妓のきく若姐さん、ひと美姐さん、豆香姐さんらとお披露目のお練りを行った。お練りはあいにくの雨に見舞われたが、沿道には多くの人が顔を覗かせ、2年ぶりの舞妓デビューを祝福した。お練りを見ていた70代の女性は、「雨は『振り込む』と言って、縁起がいいので、こういったおめでたい日に雨が降るのはいいこと」とほほ笑んでいた。

　お練りの行き着いた先は栄の商業施設「ラシック」（栄3）。ひこ乃さんのお披露目のためのステージが組まれた1階には、新しい舞妓さんを一目見ようと多くの人が集っていた。今日のために、今年6月から歌と踊りの練習をしてきたというひこ乃さん。「お姐さんに楽器を入れていただいたりしながら、ずっと練習してきた。緊張するが、精いっぱい頑張りたい」とお披露目前の心境を明かした。

　ステージでは、ゆき乃さんの三味線に併せてひこ乃さんが長唄を披露。その後、芸妓（げいこ）の演奏に併せ、舞妓2人で名古屋のお座敷芸「金のしゃちほこ」を披露し、多くの歓声を集めた。ラシック1階の洋服店の30代の女性は「こんな世界が名古屋にもあるなんて知らなかった。何だかすごい世界」と驚いた表情で見つめていた。

　東新町の置き屋から成る名妓連は一時200人以上の芸舞妓（げいまいこ）を抱えていたというが、現在では在籍する芸舞妓は20人ほど。2人の舞妓に名古屋花柳界の期待がかかる。