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伏見ミリオン座で映画「ふがいない僕は空を見た」-タナダ監督来名

来名したタナダユキ監督

来名したタナダユキ監督

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 伏見の映画館「伏見ミリオン座」(名古屋市中区栄1、TEL 052-212-2437)で11月17日から、映画「ふがいない僕は空を見た」が公開される。公開に先立ち、タナダユキ監督が来名し、会見を開いた。

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 同作は昨年の「本屋大賞」2位に選ばれ、第24回山本周五郎賞を受賞した窪美澄さんの同名小説が原作。高校生と主婦、その周りの人間たちの姿を通して「性と生」を繊細かつ赤裸々に描く話題作だ。タナダ監督は「俺たちに明日はないっス」など、青春時代の葛藤を鮮やかに描く気鋭。2008年に「百万円と苦虫女」で日本映画監督協会新人賞を受賞している。

 高校生の卓巳(永山絢斗)は、友達の付き合いで行ったイベントで「あんず」と名乗る女性、里美(田畑智子)と知り合う。二人はアニメキャラクターのコスプレをして情事にふけるようになるが、その写真や動画が何者かによってばらまかれてしまう。

 タナダ監督の4年ぶりの新作は、痛みを抱えながら生きていく人々の物語。プロデューサーから原作を紹介された時、すでに小説を読んでいたという。「この物語は登場人物の抱える問題は何一つ解決していないが、どんな人生も肯定している。生きていることに対する否定が全くない作品で、非常に感銘を受けた」と話す。

 原作の魅力を感じながらも、映像化には悩んだという。「一人称で言葉によって語られている細かな感情を、どう表現したらいいか。ナレーションは使いたくなかったので、難しかった。脚本の向井康介さんには群像劇にしたいとお願いした。いい脚本が上がってきても、自分の中に『もっといけるのではないか』という感情があり、試行錯誤が続いた。最終稿は最初にいいと感じた脚本から、さらに構成がシンプルになった」と振り返る。

 難しい役をダブル主演で演じたのは、永山絢斗さんと田畑智子さん。「田畑さんはいつか仕事をしたいと思っていた女優。やってくれるか分からないが、お願いしてみようと出演を頼んだ。永山さんは『卓巳っぽい』という予感があった。内に秘めたものがある俳優で、いろんなことができる役者」とキャスティングの理由を語る。

 ベッドシーンは下品にならないようにしたかったと監督。「それができたのは2人の持っている品のおかげ。田畑さんに心配なところを聞いてみたが、何もないとの返事だった。そう言えるくらい覚悟を決めてくれた。気が楽になり、こちらも腹をくくるのが礼儀だと感じた。永山さんも高い集中力で、役に対して真摯(しんし)に向き合ってくれた。ベッドシーンは緊張していたらしいが、顔には出さなかった。カメラが回ると卓巳になっていた」

 コスプレでの情事や、病気の家族を抱えて極貧の生活にあえぐ友人など、特殊にも見える登場人物たち。しかし監督は一歩踏み込めば、ごく普通の人たちだと話す。「一見コスプレなどに目がいく話だが、友人の友人にいるかもしれないと思える人たち。かわいそうな、苦しい状況に描くこともできたが、フラットな目線で描いている。俳優たちが映画の中でそれぞれの人生を生きてくれた。卓巳が何を感じて、なぜ最後のせりふを言うようになったのか。それを見てもらいたい」

 最後に監督は「今回のスタッフ、キャストに会えて、映画を作る醍醐味(だいごみ)を味わえた。俳優の演技を間近で見ていて、ぜいたくだと思える瞬間がたくさんあった。この作品を良くしようと俳優たちが背負ってくれたものを、ぜひ見てほしい」と話し、映画の成功を願った。

 同17日より全国ロードショー。

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