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「あいちトリエンナーレ」作品制作始まる-伏見地下街に作品第1号

青色になった伏見地下街の地上出入り口

青色になった伏見地下街の地上出入り口

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 伏見地下街(名古屋市中区)と愛知芸術文化センター(東区東桜1)で、8月10日からの開幕に先駆け国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2013」の作品制作・設置が始まった。

不思議な風景が描かれた伏見地下街

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 伏見地下街では台湾出身のアーティスト劉國滄(リュウ・クオチャン)さん率いる「打開連合設計事務所」が展示作品第1号「昭和時代階段(仮称)」を制作した。同グループは2001年、劉さんを中心に設立。台湾の台南市を拠点に、アートと建築を架橋するリノベーションなどで世界的な評価を受けている建築家、アーティスト集団。

 劉さんらは4月24日から名古屋に滞在し、27日から約2週間かけて作品を制作。地下街の壁と天井、ショーウインドー、空き店舗、地上出入り口を、水性塗料ペインティングとカッティングシート等で青く染めた。「前回のトリエンナーレには多くの優れた作品が展示されたと聞き強い興味を持っていた。日本は東京、名古屋を3回ずつ訪れたが、大きな通りから小さな路地に入ると、台南の風景と似ていて親近感を覚える。伏見地下街を作品の場所に決めたのは、私たちの求めている都市と歴史というテーマにマッチしていると感じたから」と劉さん。

 青色で描かれたのは昭和の時代を思い起こさせるもので、過去と現在、未来をつなぐ情景を表現しているという。「どの都市にも大事な記憶、追憶がある。しかし、そうしたものが発展の中でなくなってしまうこともある。ブループリントという手法で、忘れ去られた歴史を現代の社会によみがえらせ、地下街を再び活性化させることが今回の作品の大きな目的」

 今回の作品制作には東北大、大同大の学生、一般から募集したアーティストサポートボランティアが参加している。「参加者、スタッフ、そして受け入れてくれた地域住民の方々に感謝している。創造は生活の中から生まれるので、生活と芸術は分けることができない。人の中から何かを引き出すことが芸術の強み。この作品制作に関わり、皆さんの中に引き出されたものがあったのでは」とも。

 作品の楽しみ方について、劉さんは「見る人たちの想像力をオープンにしたい。真剣に都市というものに向き合っていくと、未来はその中から生まれてくる。面白い錯覚を楽しめる絵もあるので、どの位置から写真を撮ったらいいか探してみてほしい」と呼び掛ける。

 「あいちトリエンナーレ2013」芸術監督の五十嵐太郎さんは「第1号は、トリエンナーレが始まったことが広く伝わりやすい作品になった。地下商店街は通勤する人たちが毎日通るし、地上への出入り口も青く塗られているので、制作中も歩行者や信号待ちの車の運転手から注目されていた。何か新しいことが起きていると伝わっている。写真や動画で撮るのにも向いているので、トリエンナーレのまちなか展開を、いい形で象徴してくれている」と話す。

 愛知芸術文化センター11階の展望回廊では、ルーマニアのアーティスト、ダン・ペルジョヴスキさんがドローイング作品を制作した。ペルジョヴスキさんは、ルーマニアのブカレストを拠点に活動するアーティストで、マスメディアをにぎわせるニュースを素材にしたユーモアを織り交ぜた批評的でシニカルなウォール・ドローイング作品で国際的に知られている。今回は展望回廊のガラス窓を、白の水性顔料インクで描かれた数百点のドローイングでにぎやかに彩った。

 ペルジョヴスキさんは初めて日本滞在。「日本の展覧会からの初めての参加依頼。大規模な国際展と聞いていたので、私もその一部として参加したいと思った。違う文化に出会うのは興味深いことだし、知らないことに向き合う経験は大事。日本で見るもの全てが面白い」と話す。

 ガラス窓に描かれた絵は世界各地で起きている政治紛争、経済格差、グローバリズムといった諸問題や、ペルジョヴスキさんが日本を訪れて目にしたものだという。「よく知っている場所なら制作に臨む前に頭の中で考えてくるが、今回は初めての場所。日本の社会的、政治的、文化的な問題を眺め、観察し、そこにどういう反応ができるか。日本と私の関係は始まったばかり。発見しながら作品を作っていきたい」

 「今、アートに何ができるのか」を考えることが重要なテーマにもなっている今回のトリエンナーレ。ペルジョヴスキさんは「アーティストは問題を解決することはできないが、それをオープンにして見えるようにすることだけはできる。例えばユーモアをもって物事をはっきり発言することができるように。私の作品からは、世界中でいろいろな人がいろいろな問題を抱えていることが分かるはず。来場者がこの作品を見れば、人は一人ではないと感じられる。ここに来た皆さんに、一人でも笑ってもらう、考えてもらうことができたら私には成功」と話す。

 ペルジョヴスキさんは「ぜひ見に来てほしい。私の作品と一緒に、窓越しに皆さんが住んでいる街も見ることができる。素晴らしい光景を楽しんでほしい」と笑顔で来場を呼び掛ける。

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