かつて繊維問屋街として栄え「長者町」の名前で知られる、錦2丁目かいわいのエリアマネジメント会社「錦二丁目エリアマネジメント」のお披露目会が11月14日、同エリア内の堀田商事ビルで行われた。
同社は町内会、まちづくり協議会、地域の企業で構成する協同組合が主体になり立ち上げた。設立は2018年3月。社長に就任した名畑恵さんは、地域に関わり15年目。NPO法人まちの縁側育くみ隊のスタッフとして2004年からまちに関する学習会の開催を重ねてきた。その成果の一つとして、地域や専門家など地区内外の人が集まり「これからの錦二丁目長者町地区まちづくり構想(2011-2030)」を2011年に発行した。
構想ができてからは歩道拡幅の社会実験をはじめとするたくさんのアクションが起き、名畑さんはその手伝いをしてきた。長者町が「あいちトリエンナーレ」の会場に位置付けられた時にはアーティストとまちの人をつなぐ役割など出会いの場を作るほか、インタビューの手伝い、展示会場探しを担うなど、「まちの人たちや地区に関わるたくさんの人の声を聞いてまちの未来を一緒に考えお手伝いする『御用聞き』的な活動をしてきた」と振り返る。
お披露目会には錦2丁目に関わる各団体、地区内の事業者、名古屋市、ほか街づくりに携わる関係者などが集まり、親睦会も行われた。
かいわいの魅力について名畑さんは「都心にありながら人のつながりが残っている。回覧板もちゃんと回る。繊維問屋を営む人たちのコミュニティーが中心のため『旦那衆』『顔の見える商い』などの文化が残っているのも魅力」と話す。
街づくりの財源を生み出すことと地域の各組織の役割を再編していく必要性があるとし、会社化を決断。「志高い人たちで街づくりを進めてきたが、ボランタリーでできることには限界がある。活動のための財源を確保することは急務」。「錦二丁目まちづくり協議会」がこれまで同様、まちの主体をつなぎ、全体的なビジョンを描き、同社は「機動力のある事業部隊としての役割を果たせれば」という。「このまちは、町内会と繊維産業を中心とした協同組合が、両輪で暮らしや営みを支えてきた。こういった以前からある仕組みを続けていくためにも、地域組織のお手伝いができれば」とも。
財源の中心は、2021年にオープン予定の7番街区再開発施設の一部の店舗床を所有し運営すること。再開発内にできるまちづくり拠点で地域や居住者へのサービスも考えているという。「再開発施設は3年後完成予定なので、今からエリアを対象とした事業開発をしていく。暮らしや営みを支えるサービスが中心で、公共空間を活用したマルシェや、エリアセキュリティー、エネルギー事業などを考えている」とも。
社長に就任したことについて「『御用聞き』から『高級御用聞き』にアップデートしたい。『長者町おじさん』の愛称で呼ばれる経営者として辣腕(らつわん)を振るってこられた豊島徳三さんから『高級御用聞きになりなさい』と言葉をもらった。提案のできる御用聞きという意味。まちの経営資源は何か、目利きできるかどうかにかかっていると思う」と話す。「師匠である故・延藤安弘先生からは『都市をあきらめたらアカン』と何度も言われた。経済合理性一辺倒になりがちな都心の中でも小さな地区ならではのアイデンティティーを経営資源に転換できるか、というチャレンジでもある思っている」と意気込みを見せる。