戦時中に日本に落とされた爆弾(不発弾)が主人公の子ども向け絵本「よわむしばくだん」(三恵社)の出版記念会が9月15日、名古屋市中区内・納屋橋エリアの飲食店で開かれた。
コピーライターで絵本作家でもある広告会社「エピスワード」(中区栄5)社長の岡田新吾さん著作の同作。「学研発行の学習雑誌に長く携わり、子ども向けのツール制作の面白さに目覚めた」という岡田さん。キャラクターのライセンスビジネスにも携わり、物語を創作していく中で絵本作りに挑戦した。代表作は「うみのともだち、ぼくのともだち」(2015年)、「シャバーニだいすき」(2016年)など。
絵はニシハマカオリさん。三恵社(北区)から8月15日に発行された。読者の対象年齢は5~7歳。
物語は土の中でずっと一人でいた「ばくだん」(不発弾)が一匹のモグラに出合ったことに始まり、「ばくだん」が話す自分の話で戦争の悲惨さを感じさせる内容。爆弾が敵の基地などのほかに民家が立ち並ぶ街にも無差別に落とされることを知った「ばくだん」の気持ちなどをつづる。地上で行われている建設工事で「ばくだん」が不発弾として見つかったことで避難した家族の会話で、戦争中の怖さや幸せへの願いも表現した。
岡田さんは「名古屋も空襲で大きな被害を受け、いまだに市内でも不発弾が見つかっている。米軍が落とした不発弾が見つかると戦争が身近に感じられる。『不発弾は恐ろしい』と思うと同時に、不発弾が戦争の悲惨さを呼び覚まし、現代の子どもたちにも戦争がどういうものかを、理屈ではなく肌感覚で分かってもらえるのではと思い、当作を考えた」と説明する。
出版記念会にはクリエーターやアーティストなどが参加。プロのナレーターが読み上げる朗読会も開いた。
同作を作るに当たり、数年前から戦争の絵本を調査したり、時代背景を調べたりしてきたという。岡田さんによると、戦争がテーマの日本の絵本は、戦争体験者が自身の経験や目にしてきたことを語らなければという思いを題材に作られているので残酷なシーンが多く、海外の絵本は軍人や兵隊が登場する内容が多いという。「戦争テーマの絵本の中で子どもが初めて手に絵本にしてもらいたい。この絵本なら恐怖に怯えることなく、戦争がいけないことで、恐ろしいことだと分かってもらえる」と岡田さん。
内容は28ページで、価格は1,760円。