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名古屋・千代田で福祉施設がアートや飲食のイベント 街なかの4カ所会場に

「あっぱれ!!ちよだ ありがとうまつり」を紹介する「SFRN」のメンバーとさふらん生活園施設長の水上明彦さん(左奥)ら

「あっぱれ!!ちよだ ありがとうまつり」を紹介する「SFRN」のメンバーとさふらん生活園施設長の水上明彦さん(左奥)ら

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 鶴舞駅近くにある千代田三丁目(名古屋市中区)の施設や店4カ所を会場に展開するアートやグルメ、ライブなどのイベント「あっぱれ!!ちよだ ありがとうまつり」が9月20日、始まった。

SFRNメンバー・佐々木紫乃さんの作品が採用されたハロウィーンパッケージの「名糖アルファベットチョコレート」

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 主催は知的障害者が活動する施設「さふらん生活園」。イベントは同施設所属の50人以上から成るアートコレクティブ「SFRN」の作品展示や飲食・物販イベントなどを同施設や近隣のカフェ、ギャラリー合わせて4カ所で展開。スタンプラリーも用意し、街を回遊できるようにした。

 アートスタジオ・ギャラリー「studio VICON」では、SFRNメンバー・佐々木紫乃さんが色鉛筆で描く絵画作品の展示販売のほか、佐々木さんの絵画をモチーフにしてタフティングガンで作るラグ、渡邊富弘さん原画バッグの受注販売を行う。ウールラグや手すき和紙など同メンバーの作品も販売するほか、公開制作も行う。カフェ「ファーマシーコーヒー」では、「名糖アルファベットチョコレート」のハロウィーンパッケージに採用されている佐々木さんの原画などの個展を開催。タフティング制作を担うセレクトショップ「panio」では植物を販売するイベントを行う。

 さふらん生活園では、施設を一般開放(23日を除く)するほか、21日・22日には「さふらんまつり」を開催。SFRNメンバーによる音楽バンド「スーパーピッチョーネ」ほかが出演する「性別、国籍、障害の有無に関わらず音楽を楽しむ」というテーマのステージや、名駅の居酒屋「のんきや」や知多の「かこ農園」、カフェなどが出店するイベントを展開する。25日には水上さんやラジオナビゲーターなどが登壇するトークイベントも開催する。

 37年間にわたり運営されてきた同施設長の水上明彦さんは「ずっと閉じこもっていたが、社会にメンバーの日常を開こうと、周辺の店や施設以外の人とも関わる企画とした」と話す。コロナ禍で時間に余裕ができ、長年モヤモヤしていたことについて考えたという。「自宅から車で来て車で帰るなど施設のメンバーは社会との関わりがなく、これでは存在がないものとされてしまう」とも。本人の気持ちを曲げてでも真っすぐな形になるように製品を作る必要があるのか、チャリティーバザーなど販売方法もこれでいいのかなどと職員とも話し合い、自然にできたゆがみなどは「ゆらぎ」と呼び、そのまま商品に生かす方法を考えたという。はさみが好きな人には布をひも状に切る作業に専念してもらったり、布を糸状にほぐすことが好きな人が作り出す素材を紙すき製品に使ったり、メンバーが好きでやっていることと職員のアイデアを合わせて、一緒にものづくりをしているという。「好きなことができるようになったメンバーの目は生き生きとしている。職員も楽しい」と話す。

 アート作品として美術館でも展示されている同メンバーの井口直人さんの作品は、同施設やコンビニのコピー機で、自分の顔とビールの応募シールなど気に入っている物と一緒にコピーする長年の日課の成果物。最初は遊びのつもりで職員が連れ添い通っていたコンビニに、今では1人で行くようになり、ビールを買いつつ日課もこなす。

 「井口さんが店に行くと店員さんが『おかえり』と言う。井口さんと地域との関わりができている」と水上さん。「イベントではメンバー個人の生きざまや息遣いを感じ取ってもらえれば。社会に開くことで会話が生まれる。千代田の地域の人には長年理解してもらえてきたことに感謝したい」と話す。

 9月26日まで。開催時間は会場により異なる。

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