廃業寸前だった老舗菓子店「元祖 鯱(しゃち)もなか本店」(名古屋市中区松原2)の復活劇をまとめた書籍「鯱もなかの逆襲」が11月28日、発売された。
名古屋の老舗菓子店の廃業寸前からの復活劇描いた本「鯱もなかの逆襲」
著者は同店専務の古田憲司さん。発行はワン・パブリッシング(東京都)。
1907(明治40)年に御園町(現在の御園通)で創業した同店。2021年に古田さんの妻の花恵さんが父親である先代から引き継ぎ、今は夫婦で切り盛りしている。
古田さんによると数年前までは同店看板商品「鯱もなか」の知名度は低かった。コロナ禍で売り上げが激減したのもきっかけに、先代が70歳になるタイミングで店を閉める方向で縮小に向かっていたが、古田さんが行ってきた取り組みで、後継者問題や従業員ゼロ、赤字続きで資金もないなどの問題を乗り越え、今ではどん底時と比べ売り上げは約10倍になり従業員も複数いるという。
本の出版について古田さんは「SNS発信やメディアで取り上げてもらうのと同じように鯱もなかを知ってもらい商売につなげるため、また、同じような境遇の人に参考にしてもらえるように、本にまとめた。鯱もなかを全く知らない人にも面白いと思ってもらえるようにもした」と話す。
同書は同店を経営する上で実際に起こった出来事などを時系列にまとめてある。経営難の時期に行った自分の価値の見直し、昭和・平成でやってきたスタイルを時代に合わせて変更したSNSほかツールの利用、購入導線における工夫、プレスリリースの発信など。「運命を変えた」(古田さん)という1本の記事のエピソードのほか、著名人とのコラボやその秘策などをつづる。人脈作りなど小規模な事業体が戦うための秘訣(ひけつ)や、名古屋の活性化など今後の目標にも触れる。
古田さんは「奇跡的な出来事も書かれているが、これは自身で仕掛けたり考えたりした結果でもあるので、特別な人でなくてもできると思う。自分の可能性にふたをせずに、意識一つを変えるだけで入ってくる情報やアンテナの張り方も変わる」と話す。
四六判、208ページ。価格は1,760円。主要書店のほか、オンライン、同店店頭で販売する。