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114年続く名古屋の老舗菓子店、長女が4代目に 伝統大切にしつつ「自分のできる形で」

「元祖 鯱もなか本店」店舗の前で、4代目社長の古田花恵さんと夫の憲司さん

「元祖 鯱もなか本店」店舗の前で、4代目社長の古田花恵さんと夫の憲司さん

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 後継者問題を乗り越え114年続く名古屋の老舗菓子店「元祖 鯱(しゃち)もなか本店」(名古屋市中区松原2、TEL 052-321-1173)の4代目社長に同店の長女の古田花恵さんが就任し、約2カ月が経った。就任日は8月27日。

1921(大正10)年に作られた主力商品の一つ「元祖鯱もなか」

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 同店は1907(明治40)年に御園町(現在の御園通)で創業し、戦後に現在の場所に移転。社名にもなる主力商品の一つ「元祖鯱もなか」は1921(大正10)年に旧名古屋城天守閣の金のしゃちほこを型取って作られた。本店のほか、駅のキヨスクや百貨店で販売する。

 長年、3代目の花恵さんの父親が、母親、従業員と一緒に続けてきた同店。洋菓子も同店内で販売する。就任前は専業主婦だった花恵さん。これまで手伝いはしてきたものの、商品開発や経営には関わってこなかった。新しいメーカーも出てくる中、父親が70歳になるタイミングで店を閉める方向で、縮小に向かっていたが、「それでいいのか、ずっと引っかかっていた」と花恵さんと夫の憲司さん夫婦共々が思い、M&Aも含め商工会に相談するなどしていたが、父親は承継に前向きではなかったという。

 昨年、新型コロナが来て、キヨスクの商品の売れ行きもほとんど上がらず、いよいよやる気が沈んでいく中、憲司さんがSNS上で見つけたコロナで打撃を受けた事業者の支援グループを通じて商品販売をしたところ、今まで直接聞くことがなかった購入者からの感想やよろこびの声を受け、商品や店に対する思いを新たにした。花恵さんはネット販売に再注目し、7月末にまずはオンラインショップをリニューアルし販売を強化した。

 受け継ぐことを決意した当時を振り返り花恵さんは「不安だったが、100年以上の歴史が0になってしまうことと、温かい応援のメッセージや常連のお客さまによろこんでほしいという気持ちが大きくなり、自分のできる形でお店を残そうと決意した」と話す。

 現在は、和洋菓子の職人として父親は現場に立ち、新しく若手の職人も迎え、夫の憲司さんと協力し店を切り盛りする。新商品の開発にも意欲的で、新たなヒット商品を開発中だという。八丁みそメーカーとのコラボや、クーポンを活用したPRなど積極的に活動する。

 主な商品は「元祖 鯱もなか」、3代目が開発した人気商品の「金しゃちパイ」(こしあん・栗あん)、「なめらかプリン」、大福、生ケーキ、マドレーヌなどの焼き菓子など。オンライン販売も好調で「全国からの注文がある。旅行に行きづらい中、菓子で楽しみたいという需要もあるようだ」(憲司さん)。

 花恵さんは「地域の方が気軽に立ち寄れる、新しい交流や出会いが生まれる場所にしたい。もなかなどの歴史のある菓子はしっかり継承して、今後新しい菓子の開発をしていきたい」、憲司さんは「3代目の原材料へこだわりは大切にしたい。これからも、名古屋らしさ、食べておいしい、見て楽しい菓子を追求していきたい」と意気込む。

 営業時間は9時~17時30分(日曜・祝日は17時まで)。

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