国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2016」への参加が決定したアーティスト・青木涼子さんが、愛知芸術文化センター(名古屋市東区東桜1)で会見を開いた。
来年で3回目となる同芸術祭。名古屋市、豊橋市、岡崎市を会場に来年8月11日~10月23日の74日間にわたり開催される。今回は「虹のキャラヴァンサライ 創造する人間の旅」をテーマに現代美術、パフォーミングアーツなどの展示・上演が行われる。これまで現代美術20組、パフォーミングアーツ5組、映像プログラム1組のアーティストとプロデュースオペラの出演者が発表されている。
青木さんは東京藝術大学の能楽科を卒業。能と現代音楽やオペラを融合した新たな試みで注目され、世界各地の音楽祭などで公演している。2010年より世界の作曲家に委嘱するシリーズ「Noh×Contemporary Music」を主催。2015年に文化庁文化交流使に就任。ヨーロッパで精力的に活動を行っている。
「能を始めたのは中学校時代にテレビで見たことがきっかけ」と青木さん。現在のような能と他ジャンルを融合させる活動を意識したのは大学時代だという。「能の家出身ではない自分が、男性がメーンの能の世界で続けていけるのか悩んだ。他学科と交流する中で、今まで取り組んできたことを生かして新しいものが生み出せると感じた。誰もやっていない活動だったので、挑戦の場が与えられ、成功できたのはとてもラッキーだった」と振り返る。
この日はパフォーミングアーツの会場の一つとなる「ナディアパーク」の名古屋市青少年文化センターなどを視察。あいちトリエンナーレについては「さまざまな芸術祭がある中で、舞台芸術や音楽まで入っているところは少ない。魅力的なコンセプトなので、声を掛けていただき、すごくうれしかった。この中でやるなら、冒険もできるかなと思っている」と話す。
来年のトリエンナーレでは、2012年に能「安達原」を元にフランスの作曲家オレリアン・デュモンさんが作曲したオペラ「秘密の閨(ねや)」を上演する。「旅の途中に宿を借りた山伏が鬼女に出会う物語。デュモンさんは、その前段階のどうして普通の女性が鬼女になったのかという話をオペラにした。安達原という能がフランスに旅して、現代音楽家の手で新しい作品になった。今回のトリエンナーレのテーマに合っていると感じた」と選んだ理由を話す。
「2012年は音楽をメーンにしたコンサートバージョンだった。今回が能とオペラが融合する本当の意味での初演。デュモンさんはささやき、声のかすれなども音楽の一部のように扱い、楽器が声みたいに聞こえるところもある。私はそれを能の謡(うたい)の技術で歌う。動きの演出も伝統的な能とは違う部分があるので、舞も新しい挑戦になる。衣装や能面も新たなものを用意して、来年の舞台で完成させる。伝統的な能面は使用せず、顔が透けるような新しい面で女性と鬼女の変化などを見せようと考えている。一枚の屏風(びょうぶ)が次々と重なっていくような舞台を創りたい」と意気込む。
最後に青木さんは「能を分かりやすくするような舞台ではなく、能をベースに全く新しいものを生み出せたらと思っている。オープンな気持ちで、今まで見たことがない舞台を楽しむつもりで来ていただけたら」と呼び掛けた。