東海地方唯一の常設寄席「大須演芸場」(中区大須2)が9月22日に再開し、こけら落とし興行を行った。
同演芸場は1962(昭和37)年に建設、1965(昭和40)年より寄席として開館後、約半世紀にわたり落語などの演芸の興行で市民を楽しませてきたが、昨年2月に惜しまれつつ閉館した。
新生・大須演芸場は席亭制度がなくなり、「一般社団法人大須演芸場」の理事による合議制で運営する。矢崎通也さんが支配人に就任。初代林家三平さんの妻・海老名香葉子さんを最高顧問に迎え、興行の企画、運営面でのアドバイスを受ける。
この日は大須観音で朝9時からご祈祷(きとう)を行い、桂文枝さん、柳亭市馬さんら東西の落語家たちと地元名古屋の芸人らが、演芸場の新たな第一歩の成功を祈った。祈祷後、春風亭昇太さん、林家たい平さんを司会にセレモニーを開催した。
澤木孝夫代表理事は「皆さま方にとって大切な演芸場をお預かりしている気持ちで、私利私欲なく運営に取り組みたい。一日でも長く続けていけるように頑張っていく。そして次代を担う人たちにバトンを渡していきたい」と意気込んだ。河村たかし名古屋市長は「大須は空襲で何も無くなったところから、皆さんの頑張りでここまで大きな商店街になった。皆さんの力で演芸場を毎日、満員にして盛り上げてほしい」と再開を祝った。
セレモニーに参加した落語家たちは「お練り道中」を行い、大須の街を練り歩き、沿道に集まった人々の声援に応えて手を振った。
同演芸場の前で開かれた会見で海老名さんは「大勢の方に喜んでいただいて、うれしくて胸が躍った。これから大須の街が盛り上がるよう少しでも力になれるよう頑張りたい」と話した。矢崎支配人は「人の力はすごいと感じている。この縁を継続していけるよう頑張っていきたい」と抱負を語った。
午後から始まった寄席は、200人を超える観客が詰めかける大入り。最初に東西の落語家が高座に並び、口上を述べた。林家三平さんは「昨年の秋、再開の相談を受けて、母と共に文枝師匠に助けを求めた。師匠は翌朝にすぐ東京に来てくれた」と東西の落語家集合となったてん末を振り返る。文枝さんは「師匠について、ここに泊まったことを思い出す。名古屋に大須演芸場あり、となれば東西の芸人も出やすくなる。ごひいき賜りますようお願い申し上げます」と口上を述べた。その後、観客は林家木久扇さん、桂ざこばさんら人気落語家の名人芸を堪能した。
夕方からは「名古屋芸人開場特別寄席」を開催。地元芸人らが昼に続いて満員となった観客に元気な姿を披露した。「ただいま!」の第一声で始まった古池鱗林さんからトリを取った雷門獅篭さんまで、昨年の閉館から再開までの日々を枕に話し、客席からは大きな拍手と声援が送られた。最後は名古屋芸人全員が舞台に登場。新生した演芸場の繁栄と全員の健勝を祈って三本締めを行い、こけら落とし興行は終了した。
同演芸場は10月以降、毎月10日間の通常寄席を開催する。残りの期間は貸し館として運営するという。