東海テレビ放送(名古屋市東区東桜1)の報道局が、新型コロナウイルスをテーマに「距離」を切り口にしたCM「この距離を忘れない。」を企画制作した。
CMは日本民間放送連盟賞への出品を一つの目的に、公共キャンペーンとして制作。これまでに震災、戦争、LGBTといった社会的テーマを扱い、昨年制作した発達障がいをテーマにした「見えない障害と生きる。」はJAA広告賞 消費者が選んだ広告コンクールで経済産業大臣賞に選ばれた。
年明けから考えたたくさんのテーマの中から、今回のテーマは新型コロナに決定。同企画のプロデューサーを務める報道局の桑山知之さんは「新型コロナと言っても、いろいろな切り口ができる。新型コロナに関わることを調べるほどに、それぞれ人が思っている、感じている『距離』に違いがあることに気づいた」と振り返る。
「テレビは備忘録の役割を持っていると思う。この問題も忘れてはいけない。描き、残す必要がある」とも。5月31日から放映を開始した。
対面取材ができないため今回は主にリモートで取材、制作したという。社内で撮影した以外の映像は、出演者自身に撮影したい内容を伝え撮影してもらった。映像をもとに監督、コピーライターなどとオンラインで打ち合わせし、制作を進めた。「ニュースで視聴者映像を扱うこともあるので形に仕上げることはできると思っていたが、改めてプロのありがたみを感じた」(桑山さん)。
CMで取り上げたのは妊娠中の妻を守るために別居を決めた新婚夫婦、休校中の小学5年生5人のオンラインでのリアルな会話、オンラインスナックの様子、世界最貧国に嫁いだ日本人女性による現地の様子や政治に対する意見など。桑山さんは施設に入居している祖母に家族と一緒に誕生日祝いのメッセージを持って吹き抜け越し会いに行くシーンをCMの一部として扱った。CMの最後は「そのとき距離は」の言葉に続き、さまざまな言葉が当てられたメッセージで締めくくる。
「今も終りが見えないこの状況。このCMが答えにはならないが残しておきたいと思う。タトゥーのように決意や思いを刻むような感じ」と話す。
ユーチューブチャンネルで配信するほか、1話ずつに分けたバージョンをテレビで放映する。