新栄のマンションの複数の部屋を活用し、集まる・働く・住む場所をシェアする「新栄のわ」が現在、利用者を募っている。
同施設を運営する新見永治さんは、同マンションの1階でライブや展示などを行う空間「パルル」を運営するほか、アートや音楽イベントの企画も手掛ける。パルルや近隣の寺の境内などを会場に「0円ショップ」という、まだ使えるが自分では使わないものを持ち寄って「店」として0円で提供する企画も実施。「店に立つ出品者とお客さんが、商品の使い方やエピソードなどを通じて交流が生まれる。人のつながりには力がある」と話す。
「新栄のわ」は「楽しむ場」としてのパルルと、「集まる」「働く」「住む」の3つの新しいスペースを合わせて名付けて始めたもので、コンセプトは「人と人とのつながりを通して、新しい暮らしを考える」。
「シェアルームやシェアハウスなど、面白い使い方だと思っていたが自分では積極的に取り組んでいなかった」という新見さんが、一昨年に半年ほど入院した際の経験を機に、シェアの必要性を今まで以上に感じたという。一人暮らしの新見さんがこれまでも入院中の生活も一人でこなしてきたが、無菌室に入ることで、いよいよ身の回りのことができなくなった。「何とか人の手を借りて過ごすことができたが、擬似家族のような、ちょっとしたことを頼り合える新たな関係があってもいいのではと思うようになった」と振り返る。
知人が運営する喫茶店とコインランドリーが合体した店に地域の人が集まり、顔なじみが増える様子や、オフィスに備えた書店に人が集まる姿を参考にしたという。
一昨年前からシェアスペースとして活用していた1階の「103」は集まる場。現在はアーティストが制作場所として使うほか、新見さんの仕事場としても活用。キッチンを備えた空間で、大テーブルのほか作業スペース、小部屋を貸し出す。システムは、固定スペースを利用できる有料メンバー(月額料金=2万円~3万円、共益費=3,000円、定員=3~4人)と、固定スペースを利用しない無料メンバー(同=なし、同=2,000円、同=5~6人)があり、無料メンバーは週1日「103」の留守番をすることが条件。
「103」の最大の特徴はメンバーでない一般の人も昼間は自由に出入りができること。「SNSなどで世界中の人とつながれる機能はあるが、結局は知っている人としか話していない。調べたいこともネットで調べられる。新しい人と出会いづらい社会になっていると思う。便利だけど実は怖いことなのでは」という思いを背景に、「初めて会う人と話すと面白い発見や広がりもある。子どもや年配者、地域の人、海外の人など多様な人が集まってほしい。利用のルールは人の邪魔をしないことで、様子を見て進化させていく」と話す。「部屋を管理する人を雇う代わりに、留守番という役割を担う無料メンバーを当てた」とも。現在はメンバー募集中で、人がそろってから自由な出入りが可能になる。
2階の「205」は働く場のシェア。多目的に使えるがデスクワークに向いているという。固定スペースを持つ有料メンバー(同=1万7,000円~2万5,000円、同=3,000円、同=6人)、一人分のデスクスペースを利用できる無料メンバー(同=なし、同=2,000円、同=3人、利用期間は原則1年間)は1カ月のうち20時間を、パルルの留守番やイベント企画など「のわ」の仕事をする条件がある。
5階の「503」は、3つの個室と共有のキッチン・リビング・浴室・トイレを備える住む場のシェア。各部屋の住人の私物を置く棚を共有リビングに面して設置。個室からは開け閉めできる。「本など私物だけど、ほかの住人も使っていいものを置き、共有したり、その人の趣味嗜好(しこう)を知ることができたりする考えで作った」(新見さん)。月額料金=3万3,000円~、共益費=3,000円。
「人と何かやること、集まることは面倒なこともあるが、一人だと息詰まることもある。緩くつながれたら」と利用を呼び掛ける。