11月10日公開の映画「花腐(はなくた)し」の荒井晴彦監督が10月24日、上映館の一つ「伏見ミリオン座」(中区錦2)で同作品の見どころについて話した。
キネマ旬報脚本賞を5回受賞した脚本家でもある荒井監督。2019年公開の映画「火口のふたり」に続き、同作品が監督4作目になる。
原作は、第123回芥川賞を受賞した松浦寿輝さんの同名小説。映画では、原作にはなかった「ピンク映画界の斜陽」という設定を取り入れている。ピンク映画の監督「栩谷」を綾野剛さんが、過去に脚本家を志していた「伊関」を柄本佑さんが、栩谷と伊関との奇縁を結ぶ女優「祥子」をさとうほなみさんが、それぞれ演じる。大家からアパートの住人への立ち退き交渉を頼まれた栩谷と、住人・伊関が出会うことで、2人の会話から物語が発展していく。
荒井監督は「時代設定は約10年前。その頃は、ピンク映画の劇場の閉館が相次いだり、震災により社会に大きな影響が及ぼされたりと、時代の変わり目だった。この映画は、作中でも現実でも元に戻らない人、なくなっていく物へのレクイエムでもある」と話す。
今作で初めて一緒に仕事をしたという綾野さんに対して、荒井監督は「とても真面目で、役に対して誠実な人」と振り返る。一方で、柄本さんに対しては「長年の仲で安心感がある」とも。栩谷や伊関を取り巻く人物として、愛知県出身の俳優・赤座美代子さん、奥田瑛二さんもそれぞれ、ピンク映画の製作会社社長役、脚本家役で出演する。
自身の映画観を荒井監督は「分かりやすい面白さだけが映画ではない。『我を忘れる映画』はたくさんあるが、そうではなく『身につまされる映画』を作っていきたい」と話すとともに、名古屋の映画ファンへの鑑賞を呼びかけた。