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諏訪哲史さんが7年ぶり小説集「昏色の都」刊行 丸善でトーク&サイン会

丸善名古屋本店で開催された諏訪哲史さんのトークイベント

丸善名古屋本店で開催された諏訪哲史さんのトークイベント

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 4月24日に最新作「昏色(くれいろ)の都」(国書刊行会)が出版された名古屋市在住の芥川賞作家・諏訪哲史さんのミニトーク&サイン会が、5月25日に丸善名古屋本店(名古屋市中区栄3)で開かれた。

作品を手にする諏訪哲史さん。サイン会では来場者一人一人と笑顔で交流を行った

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 諏訪さんは2007(平成19)年に「アサッテの人」で第50回群像新人文学賞と第137回芥川賞を受賞。最新作は2017(平成29)年発売の「岩塩の女王」以来7年ぶりの小説集で、表題作となった中編の「昏色の都」、極地で夢現のあわいをさまよう幻想紀行譚(たん)の「極光」、散逸した昔の貸本漫画に遠い過去を幻視する「貸本屋うずら堂」3作の幻想文学を収録した。

 諏訪さんは「何を書くかという物語の内容よりも、文体を生み出す表現の工夫が大切」とし、3作それぞれに異なった文体にこだわったと語る。前作から7年での新作発売については「思っていたよりも早く出せた」という。

 表題作「昏色の都」は、文芸誌での初出時の3倍に改稿した意欲作。デビュー作「アサッテの人」と第2作「りすん」で聴覚を主題としたのに対し、第3作「ロンバルディア遠景」で描いた視覚的な主題を補完し、「文字の希望」を書いた。執筆においては学生時代に西洋19世紀末の象徴主義を研究した経験や欧州で見た風景が生かされたという。

 トークイベントでは、自身も影響を受けたというマルセル・プルーストの「失われた時を求めて」や三島由紀夫の「仮面の告白」を紹介し、「幻想文学とは必ずしもお化けが出てこなくてもいい。遠い過去との時間や空間の隔たり、記憶の回想も幻想だといえる。展覧会で絵を鑑賞し、次の絵を見たときに既に前に見た絵が記憶となっている。そうした現実と記憶を二重に生きていることを書きたかった」と語った。

 初の箱入りとなった装丁については「紙の本の持つ小宇宙的な魅力に未来があると思っている。文学は液晶上で読める単なる情報ではなく、手触りのあるオブジェとしての美しさも含めた芸術であるべきだと考えている」という。

 仕様は四六判、268ページ。価格は3,960円。

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