2016年に開催される国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2016」の芸術監督に、多摩美術大学美術学部情報デザイン学科教授の港千尋さんが就任した。愛知芸術文化センター(名古屋市東区東桜1)で8月2日、記者会見を行った。あいちトリエンナーレは愛知県内を舞台に行われる国際芸術祭で、2010年、2013年に続き、次回で3回目の開催。
港さんは写真家・著述家で神奈川県出身。群衆や記憶など文明論的テーマを持ちつつ、研究、作品制作、キュレーション(展覧会の企画)などで幅広い活動を行っている。2006年に「釜山ビエンナーレ」、2012年に「台北ビエンナーレ」の共同キュレイターを務め、2007年の「ヴェネチアビエンナーレ国際美術展」では日本館のコミッショナーを担当した。2013年より国際交流基金国際展事業委員を務めている。
港さんは「あいちトリエンナーレは日本で最大級の国際芸術祭であり、第1回、第2回と大成功を収めている。緊張と大きな責任を感じている。全力で成功に導きたい。芸術祭は徹頭徹尾、チームワークで行われるもの。大きなイベントを成功させてきたスタッフの経験が蓄積されているので、頼もしいチームが作れると感じている」と就任の抱負を述べた。
写真家の活動とともに人類学の一つの専門分野である「映像人類学」に取り組んできた港さん。現在も多摩美術大学で芸術人類学研究所の所員として研究を続けている。「人類学は人間の数万年にわたる営みを細部において観察し、記録し、それを伝えていくという壮大なパースペクティブを持った学問。同時に人間が何を作ってきたか、様々な困難にもめげずに人間がどう前進してきたかを、ものを作る姿勢に寄り添って記録してきた創造性を対象にしてきた学問でもある。今までの研究の成果や世界中の芸術に携わってきた人々の創造性を取り込みつつ、トリエンナーレに何らかの貢献ができれば」とも。
さらに「あいちトリエンナーレは都市型の芸術祭。特に都市の価値、都市の生み出す文化を基軸に据えたダイナミックな芸術祭であることが大きなキーポイント。同時に愛知という長い歴史と芸術、芸能、ものづくりの豊かな経験と蓄積のある地域の創造性を世界に向けて発信していきたい。過去2回の成功をバネに、2016年に向けて一丸となって全力を尽くしたい。芸術祭の主役は観客。ワクワクする楽しい驚きに満ちた創造的な旅を観客と作っていきたい」と意気込みを語った。
あいちトリエンナーレ2016は今後、10月にテーマ・コンセプト、2015年3月に企画概要の発表を、それぞれ予定している。