名古屋を中心に展開する出版社インディヴィジョン(名古屋市中区大須2)は7月23日、「産業」に焦点を当てた廃墟ガイドブック「廃墟という名の産業遺産」を発売した。同書は昨年8月に出版した「ニッポンの廃墟」に継ぐ第2弾。
オールカラーで構成された同書には、「秩父セメント第1工場」「旧矢作製作所」「浅野セメント門司工場」などの産業遺産40物件が掲載されている。
これまで、保存のためにという理由から地図を載せることがタブーとされてきた廃墟本だが、同社は「実用的にするために」と前作から地図の掲載を始めた。「賛否両論あるが、それも覚悟の上。地図を手に探検する楽しみもでき、『よくぞ地図を載せてくれた』と喜びの声も多くもらう」と、同書制作担当の大畑さん。
同書刊行行のきっかけについて、大畑さんは「前作は、いろいろな日本の廃墟のガイドブック的な要素を持たせて制作したが、今回は日本の発展の一端を担っていた『産業』のみに注目している」とし、「産業遺産の中でも特に、観光地化されていないものや保存の対象になっておらずヘリテージングの対象になっていないものなどを中心に集めて構成している。人々の注目から外れた廃墟はただただ朽ちていく運命にあるが、逆にそこから何か新しいものが見いだせるのではと考えている」と話す。
もともと「廃墟マニア」だという大畑さん。個人的に巡った廃墟を自信のホームページで掲載していたところを、「ニッポンの廃墟」の制作スタッフの目にとまり制作を担当することになった。大畑さんは、廃墟の魅力について「日常の生活の中では決して見ることができない空間が目の前に広がることの迫力、ビジュアルのインパクトがものすごい。これが現実の世界なのかと目を疑う異空間的な要素が魅力」と話す。
日本には「廃墟マニア」と言われる人は年々増え、学生から社会人まで年齢層も幅広いという。「男性は工場や鉱山などの産業的なもの、女性は学校や遊園地などといったノスタルジックなものが好きな人が多い」とも。今後は日本の「B級スポット」に焦点を当てたガイドブックも発行する予定だという。「年に1回のペースでこうした本を発行していきたい」(大畑さん)。
体裁はA5版、208ページ。2,400円。