演劇集団「ハラプロジェクト」が7月1日~9日、演劇ホール「七ツ寺共同スタジオ」(名古屋市中区大須2)と大須の街の中を舞台に公演「大須ドン底」を上演する。
同集団は、役者、舞踊家で演出家の原智彦さんを中心に2005年に結成。農民の身体性を持つ日本の伝統に根差した演技作法を重視した「見世物芝居」を提唱。近年は名古屋能楽堂での「パンク歌舞伎」など精力的な演劇活動を行っている。原さんは1970年代から大須に在住。30年以上にわたり大須演芸場で演劇を上演し、「大須大道町人祭」の第1回実行委員長も務めるなど街を隅々まで見てきた。
「大須ドン底」は劇場と街中を舞台にした「大回遊式演劇」。第1幕は七ツ寺共同スタジオで始まり、第2幕は劇場を出て大須の街中で演じる。第3幕は再び劇場でクライマックス。街と劇場が一体化した前代未聞の公演となる。
この上演方法を選んだ理由は「大須という街の持つ力」と原さん。「ほかにない歴史と風情があり、芝居がとても似合う街。これを使わない手はないと思った。閉ざされた所でやる演劇を街に引っ張りだして、可能性を広げたい」と話す。
ストーリーはロシアの文豪ゴーリキーの「どん底」を大須版に読み説いたもの。「本作では200年後の日本が舞台。私の夢想ですが、200年後の日本は資源も枯渇して平安時代末期のような物資で暮らすようになると考えている。大量にごみを作りだす現代の生活は人間の歴史の中でむしろ短い期間のはず。物質的に恵まれない今の時代からはどん底に見える人たちのバイタリティーのある生活の方が極楽なのではないか」と見どころを語る。
5月には街頭群衆を演じる出演者のオーディションを開催し、4人が決定。全員が演劇未経験者という。第2幕が行われる場所はすでに決まっているが「見物の皆さんには秘密。楽しみにして大須を訪れてほしい」と笑う。
今回の公演では観劇中に劇場内で酒を飲めるようにしたという。原さんは「日本中を探しても、ここでしか見られない芝居。暑い季節なので、ビール片手に回遊式の観劇を楽しんでほしい」と来場を呼び掛ける。
全公演、19時開演。入場料金は3,000円(当日券は500円増)。
公演に合わせ大須のギャラリー「プシュケ」では6月30日から「安野亨記憶写真展2 原智彦の世界」を開催。同集団の公演を中心に、2008年から今年までの原さんの活動を写真で紹介する。入場無料。7月9日まで。