栄の映画館「名演小劇場」(名古屋市東区東桜2)で6月20日から、映画「ゆずり葉の頃」が公開される。公開に先立ち、中みね子監督が来名して会見を開いた。
中監督は、脚本家を目指していた早稲田大学在学中に岡本喜八監督と出会い、卒業後に結婚。以後、プロデューサー岡本みね子の名で、夫と共に数多くの映画を世に送り出した。今回は脚本家を目指していたころの旧姓で脚本を書き、76歳にして監督に初挑戦。プロデューサー時代からの盟友・八千草薫さんを主演に、若き日の思いを貫く女性の姿を描く。出演はほかに仲代達矢さん、風間トオルさんら。
海外勤務から戻った進(風間さん)は、着物の仕立てをしながら一人暮らしをする母の市子(八千草さん)に会いに行く。しかし、市子は展覧会を見るために軽井沢へ行っていたため、すれ違ってしまう。進は市子の部屋で、高名な画家・宮謙一郎(仲代さん)の新聞記事の切り抜きを発見する。
2005年の岡本さんの逝去から10年。新たな映画人生を始めた中監督。「夫の死後、借金を返し、家を売って一人暮らしを始めた。いつまでも夫の思い出話をしているのも嫌なので、もう一回原点に戻って脚本の勉強がしたくなった。脚本が完成するまで5年。八千草さんの役者としての魅力や、人間的な素晴らしさが全て出せる映画にしたかった」と話す。
自らと岡本監督の監督術について「似ても似つかない」と話す。「夫は才能の塊だった。監督をやることで、岡本喜八のすごさがよく分かった。また、多くの優れたスタッフや役者に囲まれても、監督は孤独な仕事なのだと分かった。大変な仕事だが、作品が手元を離れると、また作りたくなる」と振り返る。
タイトルの「ゆずり葉」は、新しく育ってくる新芽を生かすために、まだ青いうちに葉が落ちる樹木のこと。「ゆずり葉を知ってから、老いを見つめて、自分自身の最期を考えるようになった。主人公の姿には私や八千草さんはもちろん、同時代に生きた女性たちの暮らしの記憶が、風景には日本の美しさが込められている。いろいろな世代の方に見ていただけたら」と呼び掛ける。