栄の劇場「G/Pit(ジー・ピット)」(名古屋市中区栄1)で5月30日~6月4日、「劇団あおきりみかん」の舞台「鏡の星」が上演される。公演に先立ち、脚本の鹿目由紀さんと演出の「流山児☆事務所」小林七緒さんが作品の見どころを語った。
同劇団は1998年に南山大学演劇部のOB、OGを中心に旗揚げ。奇抜なシチュエーションの中で飛び交う会話や関係の「ずれ」をユーモラスに描き、現代社会の問題を浮かび上がらせる喜劇で、愛知県芸術劇場演劇フェスティバル、名古屋市民芸術祭などのコンクールで優勝。2011年には名古屋芸術奨励賞を受賞し、主宰の鹿目さんは名古屋市文化振興事業団芸術創造賞などを受賞している。昨年、名古屋テレビ塔で上演したプロジェクションマッピングとのコラボレーション「氷の塔の眠り姫」は100日間で3万人を動員した。
「鏡の星」は、文化庁・新進芸術家海外研修制度でロンドンに留学していた鹿目さんが、帰国後初めて発表する作品。2028年に発見された地球とそっくりなのにいろいろなことが逆の星「ミラー星」を調査に向かった女性たちが、自分たちとそっくりな顔で逆の性格をした人々と出会うストーリー。
結成20年目で初めて外部演出として小林さんを迎える同劇団。鹿目さんは「2009年に中津川で行われた演劇イベントで出会った時にすてきな演出家だと思い、その後それぞれの舞台を見に行くようになった。ずっと演出を頼みたいと思っていたのが、ようやくかなった」と招へいの経緯を話す。小林さんも「あおきりみかんの舞台はこの9年ほどコンスタントに見ていて、劇団自体の変化や役者の成長を眺めてきた。ここの役者たちにすごく興味があって、演出できることがうれしい」と話す相思相愛の関係。
台本を書くに当たり小林さんから鹿目さんに「社会と向き合う作品」「女性が頑張る話」というリクエストがあったという。小林さんは「世の中も大変になっているし、私自身、社会のことを完全に無視して演劇をやってもしょうがないとの思いが強くなっている。最近のあおきりみかんの作品には、社会のさまざまなことを感じている空気が入っていたので、それを潔く前面に出してみてはどうかと伝えた。もう一つのテーマは、ここの女優陣が相当面白いから。抽象的に女性が頑張るというより、この劇団の女たちが頑張る話が見たかった」と話す。鹿目さんは「海外研修に行く3日くらい前にリクエストを頂き、ロンドンでもずっと考えていた。地球とそっくりで、いろいろなことが逆になっている星が舞台の物語は、海外で異文化に触れながら考えたからできた部分が大きい。自分の中にあったテーマがクリアになり、現代の日本の社会を描く作品が書けた」と振り返る。
今回は熊本県の劇団「不思議少年」から大迫旭洋さん、森岡光さんが客演。2人は5月初旬から名古屋に滞在して稽古に励んでいる。名古屋公演後は東京公演、初の北九州市公演と3都市を巡るツアーが決まっている。鹿目さんは「2015年に短編演劇の全国大会で出会い、台本も役者も面白くて、一緒にやりたいと思っていたメンバー」と絶賛する。森岡さんは「熊本のメンバーから声援を受け、名古屋に来ている。女性が書いた台本、女性の演出でやるのはあまりない経験で、心の奥底までずきずき届く芝居に、毎日わくわくしながら稽古している。名古屋は秀吉ゆかりの国で、熊本は清正ゆかりの国。清正のごとく、忠義を尽くして頑張りたい」と意気込む。
最後に小林さんは「この劇団をずっと見てきた人ほど、この役者がこんな顔をするのかと驚いてもらえるはず。大きな問題に揉(も)まれる物語で、登場人物たちがどういう腹の据わり方をしていくのかを見てほしい。絶対に誰かにシンパシーを感じて、その人を追っていけるはず。全員で歌う書き下ろしの劇中歌も2曲あるので、そこも見どころ」と自信を見せる。鹿目さんは「常に新しいことをやってきたつもりだったが、今回はさらに新しいことでいっぱいになった。あおきりみかんらしいコメディー要素も、変わらずたっぷり入れている。社会的なことが織り交ぜられた、笑えるSFコメディー。劇場で楽しんでいただけたら」と多くの来場を呼び掛ける。
料金は一般=3,000円、大学・専門学生=1,800円、高校生以下=1,200円(当日券はともに500円増)。