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栄で映画「銃」舞台あいさつ 愛知出身の武正晴監督ら登壇

伏見ミリオン座で映画「銃」舞台あいさつ。(左から)奥山和由プロデューサー、武正晴監督、日南響子さん

伏見ミリオン座で映画「銃」舞台あいさつ。(左から)奥山和由プロデューサー、武正晴監督、日南響子さん

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 栄の映画館「伏見ミリオン座」(名古屋市中区栄1)で11月7日、映画「銃」の特別上映会が行われ、奥山和由プロデューサー、武正晴監督、出演の日南響子さんが舞台あいさつで登壇した。

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 同映画は愛知県東海市出身の芥川賞作家・中村文則さんの同名小説が原作。偶然、拳銃を拾った青年が、その存在感に飲み込まれ、精神を追い詰められていく姿を描く。主人公の大学生・トオルを村上虹郎さん、トオルが親密になっていくヒロインを広瀬アリスさん、銃の行方を追う刑事をリリー・フランキーさんが演じる。日南さんは主人公をめぐるもう一人の女性「トースト女」を演じた。「GONIN」「ソナチネ」などのヒット作を手掛けた奥山プロデューサーが企画・製作し、「イン・ザ・ヒーロー」「百円の恋」など話題作を発表し続けている武監督がメガホンを取った。

 武監督は知多市、日南さんは稲沢市と共に愛知県出身。2人が奥山プロデューサーと共に登壇すると客席から大きな拍手が起こった。第31回東京国際映画祭で武監督が「日本映画スプラッシュ監督賞」を受賞。武監督は「手ぶらで帰りたくなかったので、頂けて良かった」と笑顔を見せる。同映画祭では村上さんが「東京ジェムストーン賞」を受賞している。

 奥山プロデューサーは「4、5年前の精神的に苦しかった時期に小説を読み、主人公の気持ちに入り込んだ。村上さんを主役に武監督で撮れば絶対に素晴らしい映画になると思い、すぐに連絡した。監督は忙しい時期だったが、きっと時間ができるはずと口説き続け、引き受けてもらった」と映画化の経緯を話す。

 武監督は「小説の中にあるトオルの世界に皆が支配されている感じで、撮影中はずっと苦しかった。村上さんらキャストは、飲み込まれていく中でバランスを保つのが大変だったと思う」と話す。

 日南さんは「自分の部屋を訪れるトオルの表情や心境が変化していくところに立ち会う役。相手の変化を感じなければならないので難しかったが、演じていて楽しかった」と振り返る。奥山プロデューサーが「中村さんは試写を見て、日南さんを絶賛していた。中村さん、武監督と、彼女が拳銃を拾うスピンオフ版を撮りたいという話も出た」と話すと、日南さんは「物を磨くのが好きなので、もし銃を拾ったら、磨いてから飾って眺めると思う。引き金を引くかどうかは、分からない」と答える。

 最後に奥山さんは「今どき珍しい映画で、最後にはショックを受けると思うが、心して見ていただきたい」と呼び掛けた。

 舞台あいさつ後、奥山プロデューサーと武監督は同映画館で記者会見を開いた。中村さんの小説について奥山プロデューサーは「人間の奥底にある普遍的な何かとしか言いようのないものを書いてくれる。その活字で書かれている原石をつかむことができれば、ほかの媒体では表現できない、映画館の暗闇で真っすぐ向き合うことで伝わるものが生まれる。多くの映像クリエーターが映画化に挑みたくなるのは当然」と絶賛する。武監督は「原作が素晴らしいので、世界観を壊さないようにしたいというプレッシャーは大きかった。中村さんにこの小説は『青春』だと聞いて楽になり、文学を映画にしなければという重圧から解き放たれた」と話す。

 奥山プロデューサーは「武さんは大変な現場だった『SCORE』や『GONIN』を、チーフ助監督などの立場で支えてくれた人。きらきらした青春映画が全盛の今、自分が精神的にのめり込んだこの作品をやりたいと思った時、かつての現場や武さんの顔が思い浮かんだ。最高のメンバーで作ることができた」と話し、「この映画を作って、自分の中で喪失していたものを取り返す切っ掛けをもらえたと感じている。同じ時代の同じ逆境の中で同じ空気を吸ってきた武さんと映画を作りながら、その息吹が自分の中によみがえってきた。これからさらに戦いに行くぞという予感が自分の中に覚醒している」と意気込む。武監督は「当時は苦しいこともあったが、刺激になる最高の経験だった。青春マックスでやっていた修業時代に蓄えたものを、この映画にぶつけることができている。多くの人に楽しんでいただきたい」と呼び掛ける。

 伏見ミリオン座ほかで11月17日からロードショー。

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