名古屋在住の映画監督の今村彩子さんが8月1日、エッセー「スタートラインに続く日々」を出版した。桜山社(名古屋市)刊。
今村さんは名古屋出身で、生まれつき耳が聞こえないろう者。愛知教育大学在学中にアメリカに留学し、映画やアメリカの手話、ろう文化を学んだ。現在は名古屋を拠点に、大学で講師をしながら映画を制作し、全国各地で講演、上映活動を行っている。主な作品はサーフショップ&ハワイアン雑貨店を営むろう者の店長の日々を追った「珈琲とエンピツ」、東日本大震災で被災したろう者・難聴者を取材した「架け橋 きこえなかった3.11」、自身が自転車で日本縦断を行ったロードムービー「Start Line(スタートライン)」。LGBTや、HIV・エイズ予防啓発をテーマにした映像作品なども制作している。
同書は今村さんの初めての著作。現在撮影中の作品を含む映画の制作・上映で出会った人々とのエピソード、子ども時代の夢や映画監督を目指した日々の思い出、「ろう者の映画監督」という肩書・イメージと「本当はコミュニケーションが苦手な等身大の自分」とのギャップなど、今村さんのこれまでの歩みと現在地点を語っている。
今村さんは「映画監督は『かっこいい』『華やか』『強い信念を持った人』と思われがちだが、私はそうではない。書くならば正直でありたいと思い、映画制作や日常生活で悩み、葛藤している自分もさらけ出した。所詮『感動ポルノだろう』『成功物語だろう』と冷めた目で見ている方にも手に取ってもらえたら、うれしいなと思っている。文中から現れるのは、『輝かしい監督』ではなく、3つの臭い私だから。汗臭い、泥臭い、あー人間くさ!と思いながら読んでもらえたら最高」と話す。
仕様は四六判、328ページ。価格は1,620円。