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名古屋で諏訪敦彦監督、モトーラ世理奈さんが映画「風の電話」の見どころ語る

伏見ミリオン座で行われた映画「風の電話」記者会見。来名した諏訪敦彦監督とモトーラ世理奈さん。公開はミッドランドスクエアシネマで1月24日から。

伏見ミリオン座で行われた映画「風の電話」記者会見。来名した諏訪敦彦監督とモトーラ世理奈さん。公開はミッドランドスクエアシネマで1月24日から。

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 映画「風の電話」が1月24日から、名駅の映画館「ミッドランドスクエアシネマ」(名古屋市中村区名駅4)で公開される。公開に先立ち、諏訪敦彦監督と主演のモトーラ世理奈さんが伏見の「伏見ミリオン座」(中区錦2)で会見を開いた。

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 岩手県大槌町に実在する電話ボックス「風の電話」をモチーフに、東日本大震災で家族を失った少女の再生の旅を描いた同映画。風の電話は、大槌町在住のガーデンデザイナー佐々木格さんが、死別した従兄弟ともう一度話したいという思いから2011年に自宅の庭に設置した電話ボックス。「天国に繋がる電話」として広まり、震災以降、3万人を超える人々が訪れている。映画では、震災後に移り住んだ広島から故郷の大槌町に向かう主人公・ハルをモトーラさん、旅の途中で出会い同行する福島の元原子力発電所作業員・森尾を西島秀俊さんが演じる。出演は他に西田敏行さん、三浦友和さんら。

 諏訪監督は広島県出身で、1997(平成9)年に「2/デュオ」で長編映画監督デビュー。シナリオなしで俳優の中から出てくる即興芝居を求める演出手法などが高く評価され、パリを舞台にした日仏合作「不完全なふたり」、フランスの名優ジャン=ピエール・レオー主演の「ライオンは今夜死ぬ」など、国内外で意欲作を発表している。

 移転リニューアルした伏見ミリオン座では初めての会見という諏訪監督。主演を務めたモトーラさんについて「以前に彼女の仕事を目にして、この人は誰だろうと引っ掛かっていた。オーディションで実際にお会いして、ハルはこの人しかいないと確信した」と話す。モトーラさんは「小さい頃から家族が亡くなる話が苦手で、絵本でもつらくなった。この映画の台本も途中で読み進めることができなくなり、オーディションには行きたくなかった」と明かす。

 モトーラさんにとって即興芝居での映画は初めての挑戦。諏訪監督は「芝居への入り方が素晴らしく、佇まいが視線を引き付ける。彼女の中に流れている独特な時間があり、ずっと見ていられる」と絶賛する。演じたハルについてモトーラさんは「震災で家族を失ったハルよりも、震災前のハルを考えた。私と同じ家族のことが好きな、どこにでもいるような女の子。普通に友達がいて、学校に通って、遊んでいたはず。そう思ったら、難しく考えずに演じることができた」と話す。

 撮影は物語と同じく広島で始まり、大槌町で終了した。諏訪監督は「本当に旅をしている感じで、ハルはストーリーの通りに俳優たちと出会い、別れていく。出番が終わった人は順にいなくなるので、ハルが取り残されるようになっていく。西島さん、三浦さん、渡辺真起子さんらは過去に僕の作品で主演してくれた俳優。自分のこれまでの映画を振り返る意味でも彼らにいて欲しかったし、ハルを見守ってほしいという気持ちが強かった。西田さんとは初めての仕事。福島出身の西田さんには、いろいろな感情や言いたいことを、そのまま表現してもらえばいいと思っていた。西田さんの場面は全て任せて即興芝居をしてもらった」と話す。

 最後に諏訪監督は「さすらうハルを撮りながら、日本を見てみたかった。今回、福島や岩手などを撮ったが、本当に日本は傷ついた国だと思った。被災地だけではなく、どこに行っても傷だらけ。地方に行けば、コミュニティーは壊れ、店は閉まっているし、人が歩いていない街がいっぱいある。震災から8年たって街はきれいになっていき、傷が映らなくなってきたが、消えたわけではない。報道もされなくなり、忘れられていく傷、悲しみを映画で表現したかった」と思いを語った。

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