「ゴッホ展-響きあう魂 ヘレーネとフィンセント」が2月23日、名古屋市美術館(名古屋市中区栄2)で始まった。
個人収集家ヘレーネが気に入った点を記した手紙の文章も添えられる作品「レモンと籠と瓶」
ファン・ゴッホ作品を集めた個人収集家ヘレーネ・クレラー=ミュラー(1869-1939)をテーマにした同展。16年ぶりに来日した作品「夜のプロヴァンスの田舎道」をはじめ、「クレラー=ミュラー美術館」所有の作品を中心に展示する。作品数は全体で72点。ゴッホ作品は52作品で、うち4点は「ファン・ゴッホ美術館」所有の「黄色い家(通り)」など。ヘレーネがコレクションしたミレー、ルノワールなどの作品20点も併せて展示する。1階・2階で構成する。
入り口では、ヘレーネの概要を紹介する映像を上映。1階の展示室に入ると、ヘレーネと、ヘレーネの美術品収集のアドバイザーだったH.P.ブレマーの肖像画(フローリス・フェルステル作)が出迎える。担当学芸員の森本陽香さんは「肖像画で見えるように、ヘレーネは実際にも真面目でストイックな性格だったといわれている」と紹介する。
収集した作品を自分の楽しみだけではく、一般の人にも楽しんでほしいという思いで美術館設立を目指したヘレーネ。1938年にオランダに「クレラー=ミュラー美術館」を開館し、初代館長に就任したが、開館翌年に逝去した。「アドバイザーの意見も取り入れたが、自分がいいと思ったものを集めたヘレーネ。当時、それほど知られていなかったゴッホの作品をたくさん購入していたため注目が集まり、ゴッホの評価の高まりに影響を与えた購入活動だった」(森本さん)と説明する。
時代に分けて壁の色を変えて作品を展示。色彩がダークでアカデミックな作風が多いオランダ時代は、農民を中心に労働者を多く描いたという。「色彩や補色の使い方を研究して、どんな効果が出るか意識的に描いた」(同)。たくさん展示されている素描は「独立した作品として仕上げられている」という。
展示作品から色彩が明るくなるのが分かるパリ時代の作品。続いて「種まく人」も描かれたアルルで過ごした時期の作品「レモンと籠(かご)と瓶」には、ヘレーネが気に入った点を記した手紙の文章も添える。「落ち着いた色彩の中に、レモンやかごの輪郭に赤色で縁取りした差し色が効いたメリハリのある構成」と森本さん。自ら療養院に入った時期には「精神的には辛い時期だが力強い作品を残している」(同)。南フランス滞在の最後に制作された「糸杉」シリーズ最後の「夜のプロヴァンスの田舎道」で締めくくる。
「収集家ヘレーネの視点をテーマにした当展は、ゴッホ以外にも印象派や新印象派などバランスよく収集した。自分だったらコレクションしたいかどうかなどを考え、収集家の気分で楽しんでいただければ」とも。
観覧料は、一般=1,900円、高大生=1,300円(土曜・日曜・祝日は各100円増し)。中学生以下無料。開館時間は9時30分~17時(金曜は20時まで)。休館日は3月7日・28日。4月10日まで。