NPO法人「大ナゴヤ大学」(事務所所在地=名古屋市中区大須3)が9月12日、開校13周年を迎えた。
「ういろう持ち寄り会~みんなでシェアして楽しもう~」参加者が持ち寄ったういろう。一口大に切り分け、好きなものを試食
「まちじゅうがキャンパス」「誰でも先生、誰でも生徒」をキャッチフレーズに掲げ、名古屋を中心とする東海圏で「授業」と称したさまざまな形式の「学びの場づくり」に取り組む同団体。毎月第2土曜に行う無料企画「大ナゴヤの日」や、まち歩き形式のプロジェクト「まちシル」などさまざまな企画を展開し、2009(平成21)年の創設以来、約600の授業を開催してきた。
9月10日には13周年を記念して、「大ナゴヤ大学の現在地」をコンセプトにした3つの「授業」を「スペース七番」(中区錦2)で開催した。
「インタビュー&記事づくりに挑戦! 理事長に聞く、大ナゴヤ大学のこれまでとこれから」では、参加者と運営スタッフで同団体の大野嵩明理事長にインタビューを行った。
「13年前、関心があった『まちづくり、名古屋』でインターネット検索をした際、偶然『大ナゴヤ大学』が開校するという情報を見つけた」という大野さん。開校日に開催された授業に参加したのをきっかけにボランティアスタッフに加入し、職員、理事を経て2017(平成29)年に理事長に就任した。学長交代など、これまでに起きた出来事の裏話が語られた際、参加者の笑い声が響く場面も。大野さんは「関わり始めた当時は会社員だった。まさか数年後に自分が経営する立場になるとは想像していなかった」としみじみと振り返った。
授業の後半では、インタビュー内容を文章にまとめるワークショップを実施。参加者からは「文章をまとめることに苦手意識があったが表現の面白さを体験できた」「聞き手によって要約するポイントがこんなにも変わるとは思わなかった」などの感想があった。
続いて、ういろうをはじめ「和菓子全般が好き」と公言するオシムさんが企画した「ういろう持ち寄り会~みんなでシェアして楽しもう~」を開催。参加者が持ち寄ったういろうを試食し、グループ内で感想を共有した。集まったういろうは店舗、味、材料もさまざまで、複数のういろうを味わい「食感の違いがおもしろい」「ういろうのおいしさに気付けた」といった声が上がった。試食後、持ち寄ったういろうの販売店名と試食の感想をまとめたオリジナルの「大ナゴヤういろうマップ」を作成した。
「授業を企画したのはこれが初めて」というオシムさん。授業を終え、「授業構成を練る中で、和菓子職人に話を聞いたり、身近な人とういろうについて語ったりする場をつくった。興味のあることをテーマにしたことで自分自身も学びを深めることができた。今回の経験を生かして、また授業を企画したい」と意気込んだ。
「先生」が海外からオンラインで登壇する授業もあった。「“面白い”との出会いを生む学びってどんなもの?~北欧デンマーク式の学習を体験しよう~」では、成人教育機関「フォルケホイスコーレ」で学ぶため、2022年1月にデンマークに渡った舩戸里沙子さんを先生に迎えた。舩戸さんがデンマークに留学した経緯やフォルケホイスコーレの特徴を解説し、ヒュッゲなど、デンマークをはじめ北欧諸国で親しまれる風習についても語った。北欧の文化や風習、フォルケホイスコーレに関心のある参加者が、じっくりと耳を傾けた。
授業後半には、「自身にとっての『幸せ』とは何か」など、与えられたテーマに沿って参加者同士が対話する時間が設けられた。舩戸さんによると、「フォルケホイスコーレでは対話の機会がとても重視されている」という。「対話では答えを出すことを目的としない。時にはもやもやした気分になるが、それが自分の本心を見つめ直すきっかけになることも。対話を経験した参加者に、何かきっかけを与えられたのならうれしい」と笑顔を見せた。
3つの授業に対して「作り手ごとに個性の異なる、三者三様の学びの場が生まれた」と話す大野さん。「13年の活動を経て、僕らは創設当時から掲げていた『あなたがいればカタチが変わる』というコンセプトの大切さを再認識した。関わる人が個性を発揮して生まれる多様さこそ、現在の大ナゴヤ大学らしさと言えるのでは。今後も人を中心に置き、関わる人に応じて変化し続ける組織でありたい」と抱負を語った。