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上前津のギャラリー&カフェ「THE SHOP 十二ヵ月」閉店へ 新店に意欲

ギャラリー&カフェ「THE SHOP 十二ヵ月」店主の柿沼ひとみさんと、夫で焙煎士・バリスタとしてマスターを務める久仁彦さん

ギャラリー&カフェ「THE SHOP 十二ヵ月」店主の柿沼ひとみさんと、夫で焙煎士・バリスタとしてマスターを務める久仁彦さん

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 上前津のギャラリー&カフェ「THE SHOP 十二ヵ月」(名古屋市中区上前津1)が8月12日、出店するビル取り壊しのため29年の営業に幕をおろす。

オープン10年目に金属工芸作家・水野正美さんにカフェで使いたいと、作ってもらった銅のドリップポットでコーヒーを入れるマスター

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 店主の柿沼ひとみさんと夫の久仁彦さんが1996(平成8)年2月、20代半ばと20代後半でオープンした同店。店の半分は作家物の器などを展示販売するギャラリーで主にひとみさんが企画・デザイン・運営を担当。もう半分はカフェで久仁彦さんが焙煎(ばいせん)士・バリスタとしてマスターを務める。

 もともと店舗設計・施工の仕事についていたという2人は、上質な家具や美術品を扱うインテリアストアのイメージで店作りを考えていたが、東京で出合ったカフェ併設のアンティーク家具店の形態に影響を受け、器と喫茶の両方の店に方向転換したという。たまたま気になったという予定よりかなり狭い今の場所に出店することになり、テーブルウエアから始め、多様な工芸品へ取り扱い内容を広げていった。

 「やるなら身を引き締めよう」と途中から作家物だけを扱うことに決めたが、作家との関係はゼロからのスタート。気になった作品の作家と会う約束を取り付け、仕事の様子を見せてもらったり話を聞かせてもらったりした上で、取り扱いのお願いをした。今もこのスタイルを続けているという。ひとみさんは「誰かに物を薦める上で、作家の気持ちや考えを器の良さと一緒に伝えたい」、久仁彦さんは「作家自身の魅力も伝えたい」と話す。

 カフェも途中から、コーヒーを仕入れ品から自家焙煎に変えた。久仁彦さんは「思いがある器などが並ぶギャラリーとコーヒーの釣り合いが取れていないとモヤモヤしていた。時代の変化で小ロットでも生豆を買いやすくなったことや、小型で性能がいい焙煎機も出てきたため、自分たちがいいと思うものを作って出せるようになった。入れ方を含め、これからもブラッシュアップしてきたい」と意気込む。

 長く続けてきてギャラリーとカフェは「両方本気で対等な立場」になったという。「オープン10年目に金属工芸作家にカフェで使いたいと、銅のドリップポット作りを依頼。そのポットは今では世界に羽ばたく代物になっている。ほか作家にもオリジナルグラスを作ってもらったり、器と食のイベントを開いたりと、この十二ヵ月だからで実現できることがある」とひとみさん。

 現在も、出店先を探している。ひとみさんは「やる内容は変わらないが、新しく自分たちが見せるべき形があるはず。新店を楽しみにしてほしい」、久仁彦さんは「店に思いはあるが、前しか向かない。新しい焙煎機も選定済み」と笑顔を見せる。

 営業時間は10時~18時。火曜定休。一部の作家作品やコーヒー豆などを販売するオンラインショップは継続。再開日は未定。

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